2.4 開発調査


Q29
開発調査と水道システムのリハビリテーションとの関係を説明してください





  Key words:開発調査、リハビリテーション

1.開発調査におけるリハビリテーションの考え方
 開発調査のマスタープラン調査の段階で対象とする水道事業体の全水道施設現況を把握する調査(inventory survey)を行います。これは現況と施設の限界、運転上の問題を把握すると同時に、当初の設計能力と比較し、今ある施設を将来にわたっても使用すべきなのか、使用するとすれば現況のままで大丈夫なのか、を評価する基礎になります。inven-tory survey の結果をもとにリハビリテーション(以下、リハビリ)の可能性が判明すれば、その費用が見積もられ、実施計画が立てられます。
 国際金融機関、たとえば世界銀行には「普通リハビリに要する時間は比較的短く、費用も小さい」1)から既存施設をできるだけ利用しようという考え方があります。このため「調査の初期の段階から既存施設リハビリの可能性には注目し、リハビリ対策をとれるよう中間報告書などにまとめること」としています。費用も時間もさほど要しないと判断されればリハビリに関して開発調査の早いうちに独立した報告書(たとえば immediate imp-rovement report)をまとめ、フィージビリティ調査の結果を待たずにリハビリを実施するよう勧めています。

2.リハビリテーションの内容
 リハビリの内容としては、たとえば浄水場リハビリ案件などは日本の無償資金協力の対象として妥当ではないかと思われます。場所が限定されていて作業内容も明確になっている案件ほど効果 を上げやすいのではないでしょうか。管路を対象とする場合、導送水管の補修のような案件は無償資金協力になじむかもしれませんが、市内配水管網のリハビリ作業は複雑で1〜2年間程度の期間では効果 を得られないでしょう。ですから後者については有償資金協力の枠組みのなかで無収水対策まで含めて長期的に対処していくのが妥当ではないかと考えます。
 一事業体の水道システム全体をリハビリの対象とするのは同様な理由によって、小規模事業体でない限り非常に難しいのではないかと考えられます。
 JICAの開発調査でも結果が出るまで1年から2年近くかかります。開発調査を行う一方でリハビリ案件を速やかにまとめ、たとえばJICA無償資金協力に結び付けるのも援助の効果 を求めるうえで重要なことだと思います。

【出 典】
1)Grover B: Water Supply and Sanitation Project Preparation Handbook, vol 1:Guidelines, World Bank, Washington DC, p43, 53, 1983.

【参考文献】
1)Task Committee on Water Supply Systems Rehabilitation. In: Walski TM, ed, Water Supply Systems Rehabilitation, American Society of Civil Engineers, New York, 1987.

(大村 良樹)

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