2.4 開発調査


Q30
開発調査として実施する場合に、調査対象と規模に決まりがありますか





  Key words:開発調査

1.調査対象
 普通、開発調査(ここではJICAの行っている調査に限定します)は、あくまで公共・公益事業として水道事業を運営している組織を対象としています。しかし援助対象国が広がるにつれ、さまざまな形態の事業体が調査の対象になってきました。たとえば南アフリカのマハリース水道公社は用水供給を主要な業務とする水道公社ですが、総裁の人事に政府の許可を要すること以外はほぼ民間企業としての運営を行ってきました注1)。また、タンザニアのNUWAのように全国の水道事業を任務と定められていながら首都だけを対象に業務を行っているところもあります。
 問題は近年、東南アジアを中心に増加してきた民営化した水道事業をどう扱うかということです。日本政府はOECFを通 じて行う円借款の対象を、相手国政府の行う政府事業から電力や通信など大きな設備投資を伴う民活事業にも広げる方針を決めたという新聞報道がありました1)。また、運輸省は運輸インフラストラクチャー整備への民活導入について研究を行い、中間報告書を発表したと報道されました2)。これによりますと、「アジア諸国の旺盛なインフラ需要と財政資金の制約を考慮した場合、民活導入はやむをえない状況でもある」としたうえで「JICAの開発調査を通 じて上位計画、総合計画の策定段階で技術協力を実施することが大切」と指摘しているようです。上水道の分野では最終的にどのような決定が下されるのかまだわかりません。

2.調査案件の規模
 案件の投資規模は対象とする都市や事業体の規模、独立採算制を基本にしているのか、受益者の水需要と料金支払い能力、想定される融資条件などに対応した、バランスのとれた調査であれば妥当な規模に収れんしてくると考えられます。もちろん開発調査を将来OECFなどの有償資金協力によって実施しようとする場合は対象国における過去の事例を参考にしたり、融資機関の当該国担当者に融資方針などを確認することも大切です。無償資金協力案件では日本国内での入札資格制限付き一般 競争入札による契約が、有償資金協力案件では国際競争入札による契約が普通 となっています。競争入札として成立するためには十分な数の応札を得られるだけの魅力のある規模の案件にまとめることが求められるでしょう。このためには単独では規模が小さいけれどもいくつかの案件を取りまとめて規模を妥当なものにすることも考慮するべきでしょう。
 フィージビリティ調査の結果、相手国側に優先案件を日本の無償資金協力案件として要請したいという意向のある場合には過去の事例を参考に規模を決めたり、数次にわたる段階的な計画にする必要もあるでしょう。
 通常の開発調査より小規模あるいは作業範囲を限定した調査を「開発調査」として行った例はいくつかあります。これは相手国から要請があったけれども、水源の可能性が不明確なこと、特に地下水を水源とした場合、地下水賦存量 を確認するための調査を行ったり、また、JICA内部審査の結果、要請内容の背景が不明確とされたため、当該水道事業体の基本計画を調査立案したりすることもあります。
 基本設計調査では規模が大きすぎるけれども、通常の開発調査より小さい案件の取り扱い方としては、近隣地区の類似のプロジェクトをいくつかまとめ、開発調査を行った後、1つの融資案件として資金の手当てを行う方法も考えられます注2)。

【事例プロジェクト名】
注1)南アフリカ「マハリース水道給水区域拡張計画」
注2)例としてインドネシア南スラウェシ州における5カ所の小規模な水道計画の開発調査を行い、OECF融資によって実施した案件をあげる.
  (基本設計調査対象として案件が過大であったと判断されたわけではない)

  ・JICA開発調査:インドネシア「スラウェシ地方水道計画調査」(1980年)
  ・OECF融資案件:インドネシア「スラウェシ中小都市水道設備事業」(1981年)

【出 典】
1)円借款,民活事業も対象,アジアの需要に応じ拡大.朝日新聞 1996年1月6日.
2)運輸インフラに民活の気運? 国際開発ジャーナル No. 474:1996.

【参考文献】
1)影山俊郎:民活インフラに海外経済協力基金はどう取り組んでいくか.国際開発ジャーナル No. 469:p134―141, 1995.

(大村 良樹)

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