2.4 開発調査


Q32
水道事業体の技術者が、開発調査に参画する場合のかかわり方と注意点を説明してください





  Key words:開発調査、事前調査団、水道・衛生セクター援助政策

1.開発調査へのかかわり方
 JICAの行う開発調査には大別して、事前調査と本格調査とがあります。水道事業体技術者が開発調査に参加する場合は多分、事前調査団に加わり、開発調査の方針について相手国政府と協議し、本格調査の細目について合意書を交わすことが多いでしょう。帰国後は各自の業務分担にしたがって報告書を作成します。この後、JICA担当者によって調査実施計画書と業務指示書が準備され、プロポーザルを審査のうえ、本格調査業務に従事するコンサルタントを選定します。プロポーザルを準備するコンサルタント各社は、案件や調査対象地域を必ずしも熟知しているわけではありませんので、この報告書はコンサルタント側にとって貴重な情報源となります。
 近年、水道施設・浄水処理といった技術面だけではなく、経営・組織・料金体系などの、いわばソフト面 の調査も重要になっています。技術屋ばかりではなく、事務屋にもぜひ参加していただきたいところです。
 本格調査団は主としてコンサルタントによって構成されますので、本格調査の段階では水道事業体技術者の参加は作業監理委員会の委員としての活動になるでしょう。統計資料も満足にそろわないことの多い途上国で調査を行い、水道計画を立案することをよく認識したうえで現実的な、むだのない対応をしたいものです。
 ASEAN諸国が典型的な例ですが、日本の1960年代にみられたように、途上国の都市も絶えず変化しています。ことに首都圏の成長とそれがもたらした影響にはすさまじいものがあります。加えて、時の政府が急激な都市化をまねくような経済政策から、都市への流入人口を抑制する政策へと方針を変える可能性は十分にあります。ですから「マスタープランはいったん決めたら不動のものである」とするべきではないでしょう。時期をみてreviewとrevisionは必ず行わなければなりません。

2.他の援助機関との連携
 もう一つは他の援助国(および援助機関)との連携です。OECD開発援助委員会の発表によると1994年のわが国の援助実績は4年連続で世界最大となりました。多くの先進国で「援助疲れ」がみられ、援助規模を縮小しようとしているなか、日本の努力は大きなものであると思われます。ここで援助の質をさらに高めるために、他の援助国の「経験やスタッフを豊富に有する地域や分野を有効に組み合わせる」1)ことが必要ではないでしょうか。開発調査の事前調査団に参加した場合、それら他の援助機関との協議が必要になるでしょうから、世界的な援助の動向を知っておくことも必要になるでしょう。
 たとえば、代表的な多国間援助機関である世界銀行の水道・衛生セクター援助政策は今、以下の4つに重点を置いています 2)。
(1)費用の回収 (cost recovery)
(2)住民参加
(3)女性の参加
(4)サービス形態の改善
 「費用の回収」という点は、独立採算制をとる日本の水道事業体では日々の業務のなかで常に認識されていると思います。「サービス形態の改善」は日本国内でとらえられている問題とは異なり、水道法にいう「清浄・豊富・低廉な水の供給」という基本的なところを改善しようという考えではないでしょうか(つまり、途上国の水道はこれら基本的なところが満足でないということでしょう)。この概念も日本の水道技術者にとっては当然のことだと思います。しかし、「住民参加」「女性の参加」という概念はまったく新しいものではないでしょうか。水道事業を行う組織や地方自治体もないような場所で上水道あるいは飲料水供給施設をつくろうとしたとき、運転・維持管理・集金を行うのは受益者であるべき住民であり、そのなかでも水汲み労働から解放されるであろう女性たちです。その人たちの積極的な参加なくして施設をつくっても、運営は早晩行き詰まるのではないでしょうか。

【事例プロジェクト名】
南アフリカ「マハリース給水区域拡充計画」

【出 典】
1)外務省経済協力局編:我が国の政府開発援助(ODA白書 上巻),国際協力推進協会,p69―71,1995.
2)国際協力事業団国際協力総合研修所:水道・衛生分野の技術移転:援助活動の動向と情報,国際協力事業団,p46―47,1983.

【参考文献】
1)国際協力事業団国際協力総合研修所:水道・衛生分野の技術移転:援助活動の動向と情報,国際協力事業団,1983.

(大村 良樹)

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