2.4 開発調査


Q33
わが国が水道分野の援助をする場合、円借款にするか無償資金協力にするかはどのように仕分けるのですか





  Key words:ODA、無償資金協力、円借款

1.ODA全体の方針
 水道分野に限らない全般的な原則の一つとして、政府開発援助大綱には、「途上国の発展段階に応じた援助の実施」が示されています。
 この原則を受けて、わが国のODAでは、相手国の所得水準に応じて、以下の基本方針(1995年度について)がとられています。なお、この所得水準の数字は、世界銀行の分類(Q27参照)と同じものが使用されており、毎年度修正されます。
(1)南西アジアやアフリカなどの後発開発途上国(LLDC)に対しては、援助資金の返済義務を課さない無償資金協力(グラント)や技術協力が協力の中心となる。
(2)中国やインドネシアなどの開発途上国(1997年度については、1995年の1人あたりGNPが1465ドル以下)に対しては、無償資金協力および技術協力による社会分野・人づくりへの協力とともに、返済義務を伴うが大規模な資金を供与できる円借款(ローン)により基礎的な経済基盤整備への協力を実施する。
(3)タイやトルコなどの開発途上国(1997年度については、1995年の1人あたりGNPが1466〜3035ドル)に対しては、原則として無償資金協力は行わず、経済・社会基盤整備のための円借款や開発段階に適した技術協力による人づくりへの支援を実施する。
(4)マレーシア、メキシコ、ブラジルなどの開発途上国(1997年度の目安として、1995年の1人あたりGNPが3036ドル以上)に対しては、民間資金の活用が可能であることを考慮し、円借款は経済発展の過程で生じた地域格差是正や環境保全などの課題に対する分野に供与し、技術協力により高度な技術の移転を図る。

2.水道分野の援助における方針
 水道事業には社会分野への協力と基礎的な経済基盤整備への協力の双方の側面 があり、また、居住環境の改善に資することから、環境案件として取り扱われています。
 したがって、上記の方針に照らせば、水道事業については、(1)に分類される国の案件は、原則としてグラントで対応、(2)に分類される国の案件は、案件に応じてグラントまたはローンで対応、(3)に分類される国の案件は原則としてローンで対応することになり、さらに(4)に分類される国の案件にもローンが適用できます。
 以上は基本的な方針です。これらの方針は弾力的に運用されており、(1)のLLDCに対してローンを供与することもありえます。なお、対象となる具体的な国名は、Q34の表を参照してください。
 グラントかローンかを決めるもう一つの要素は案件の規模です。グラントの総額は限られており(Q38参照)、比較的小規模な給水事業の建設やリハビリテーションはグラントの対象としやすいですが、大規模な事業はグラントで対応することは難しいといえます。
 一方、ローンは、資金上の制約よりもむしろ業務上の制約から、すべてのセクターを通 じて年間100件程度しか新規事業を取り上げることができないため、とくに具体的な最低金額は設定されていないものの、少なくとも20〜30億円程度の事業規模がなければ、現実的には検討対象とはなりません。

【参考文献】
1)外務省経済協力局編:我が国の政府開発援助(ODA白書 上巻),国際協力推進協会,p52―53,1995.

(山本 昌宏)

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