2.5 資金協力


Q37
他の融資機関の資金協力と、わが国の無償資金協力が協調して実施することができるのですか。その場合の考え方、留意点について説明してください





  Key words:無償資金協力、援助協調、共同案件

 資金協力には、有償資金協力(以下、有償)と無償資金協力(以下、無償)がありますが、一般 論でいえば、他の援助機関の資金協力とわが国の無償が協調して実施することは可能です。

1.援助協調の形態
 援助協調の形態には、多国間の協調、二国間の協調、政策レベルの協調、案件レベルの協調があります。質問は案件レベルの協調に関するものであり、『我が国の政府開発援助』によれば次のように記されています1)。
(1)実施を通じて、わが国の援助経験の少ない分野・地域について、他の先進援助国の援助手法を学ぶことを可能にする。
(2)多くの他の先進援助国が、財政的事情から援助予算が停滞ないし減少の傾向にあるなかで、わが国との共同案件の実施を通 じて、限られた援助資金を有効に活用したいとの期待を強く有している。
(3)共同案件の実施にあたっては、何よりも開発途上国側が当該案件に対して高い優先度を付していることが重要で、援助国側のみの事情で実施することはプロジェクトの「押しつけ」にもなりかねない。
(4)わが国と共同で協力する相手国の会計年度、予算執行形態など、制度上の差異により、単純な二国間ベースの案件実施に比べて手間と時間がかかることが多いことも認識すべきである。


2.他の援助機関の有償+日本の無償
 他の援助機関が有償を承認したということは、そのプロジェクトが有償で実施可能であること(フィージブル)を示しますので、なぜ、日本が無償を適用するのかという疑問が生じます。有償+無償の例は少ないと思われますが、フィージビリティスタディ(F/S)の資金計画のなかで、一部は無償を投入することでフィージブルにしている場合も考えられますから、一概にはいえません。むしろ、日本側に無償を適用する意義があるという、積極的な理由があるか否かで判断すべきでしょう。

3.他の援助機関の無償+日本の無償 
 有償+無償よりも無償+無償のほうがわかりやすいと思います。水道分野ではまだ例がないようですが、仮に共同案件を実施する場合を例にすれば、いかにして混乱せずにスムーズに実施するかが課題です。
 会計年度、予算執行形態、制度上の差異の調整から始まり、設計段階では、誰が設計を行うか、設計基準、スペックなどをどうするか、施工段階では、施工計画を調整する必要があります。したがって、施設を割り振ることは混乱が生じやすく、対象地区で分けるほうが混乱するおそれが少ないと思われます。

4.案件レベルの協調事例
 協調事例としては以下のようなプロジェクトがあります。

(1)事例 1
 案件名:ナイジェリア「貿易投資政策調整計画」
 形 式:日本の有償+イギリスの無償 
(2)事例 2
 案件名:ジブチ「北部農業開発計画」
 形 式:日本の無償+フランスの無償 
(3)事例 3 
 案件名:コモロ「通信施設整備計画」2)
 形 式:日本の無償+フランスの無償 
(4)事例 4
 案件名:西サモア「ファレオロ空港ターミナル建設計画」3)
 形 式:日本の無償+オーストラリアの無償+ニュージーランドの無償 

【出 典】
1)外務省経済協力局編:我が国の政府開発援助(ODA白書 上巻),国際協力推進協会,p263,1995.
2)国際協力事業団編:通信施設整備計画基本設計調査報告書,国際協力事業団,1989. 
3)国際協力事業団編:ファレオロ空港ターミナルビル建設計画基本設計調査報告書,国際協力事業団,1985.

(岩堀 春雄)

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