2.5 資金協力


Q41
無償資金協力で使用する資機材の第三国調達の考え方を説明してください





  Key words:無償資金協力、資機材の第三国調達、ローカル製品

 JICAの『無償資金協力調査報告書作成のためのガイドライン』から第三国調達についての基本的な考え方を以下のとおり引用します。

 「日本の無償資金協力においては、コンサルタントおよび施設の建設及び機材調達に係る業者は、日本企業でなければならないとされている。しかし、本邦企業がその下請けとして現地企業を採用することは妨げられておらず、むしろ最近では被援助国との関係では好ましいことと考えられている。さらに、無償資金協力事業において調達される建設資材、機器類等についても一定の条件においては、日本製品以外の物の採用についても認められている。特に建設資材等は品質や一定量 の調達に支障のないかぎりできるだけ被援助国市場で調達すべきである。また、機器類についても調達後の維持・管理の容易さや、アフターケア体制の確保といった観点から日本製品以外を採用することは、むしろ適切であると考えられる。なお、日本製品以外の採用にあたっては価格が安いという理由だけではなく、将来の維持・管理および被援助国の技術力等を勘案しての決定とすべきである。これは、資材、機器を世界中の市場から価格のみを条件として、自由に選択しうるということではなく、被援助国市場における調達の難易、修理・アフターケア体制(部品、消耗品の入手を含む)、普及度といった要素が、日本製品以外の物品を調達する場合の主要用件であるということである。以上の原則に基づいて、ローカル製品もしくは第三国製品の採用についての考え方をまとめると次のとおりである。
ア.ローカル製品の採用:
 品質、工期に支障のない供給が確保されるかぎり、これを優先的に採用するというのが、現時点での考え方である。なお、輸入品であっても同国市場で自由に入手しうるもの(発注を受けて輸入手続きを取らずとも恒常的に市場に出回っているもの)は、これをローカル製品と見なして差し支えない。
イ.第三国製品の調達については、先に述べた主要要件により、第三国製品を採用するべきであると判断され、かつ価格的に著しい不利でないかぎり積極的に認められる。なお、第三国調達をする場合は日本と被援助国との間で協力が約束されるE/Nに、この旨明記される必要があるので、関係者においてはこの点を十分に留意するべきである」1)。

 実際の例や上の引用から解釈しますと第三国調達を行えるのは、該当する製品が日本では製造されていない場合、日本製品と限定すると著しく高価になったり、維持管理が困難になる場合などが考えられます。有償資金協力案件ではアンタイド化が進み、資機材の第三国調達はおろか、日本以外の請負業者まで受注しています。しかし、無償資金協力案件は時間的な制約が大きく、また被援助国に向けてあくまで「日本の顔」が見えるように案件を実施したいと政府は考えていますので今後も有償資金協力案件とは異なる方針をとることでしょう。
 無償資金協力では交換公文(E/N)のなかで調達国が規定されます。無償資金協力の性格上、わが国と被援助国以外から調達を行おうとする場合には、調達国がE/Nに明記されていて、かつ事前に日本政府の承認が必要なので基本設計調査時には十分に注意して調査しなければなりません(前述のように案件実施にあたる請負業者はあくまで日本人または日本法人でなければなりません)。
 問題になりやすいのは被援助国国内で調達可能とされた品目です。「発注を受けて輸入手続を取らずとも恒常的に市場に出回っているもの」は輸入品でもローカル製品と見なされることになっています。いうなれば「見なしローカル製品」です。ところが請負業者によっては、発注して輸入した製品を見なしローカル製品と説明して納入する例もないわけではありません。あくまで基本設計調査の段階で何を第三国調達としなければならないのか、何をローカル製品とできるのか細かい調査を行ったうえで、報告書には具体的に品名をあげて記録しておく必要があるでしょう。

【出 典】
1)国際協力事業団無償資金協力調査部編:第三国調達についての基本的考え方.無償資金協力調査報告書作成のためのガイドライン,日本国際協力システム,p30,1995.

【参考文献】
1)国際協力事業団無償資金協力調査部編:第三国調達についての基本的考え方,無償資金協力調査報告書作成のためのガイドライン,日本国際協力システム,1995.
2)国際協力事業団無償資金協力業務部編:無償資金協力案件の入札業務ガイドライン:コンサルタント業務実施要領,国際協力事業団,1984.
3)Japan International Cooperation Agency:The Guidelines for Procedures under Japanese Grant, JICA, Tokyo, 1988.( 2)の英訳版)

(大村 良樹)

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