2.5 資金協力


Q43
無償資金協力で建設した施設について、引き渡し後の保証と責任範囲について説明してください





  Key words:無償資金協力、引き渡し、欠陥保証責任期間

 引き渡し(taking―over と解釈して)後の保証と責任範囲については通常、相手国と請負者との間の契約に従います。ここで標準的な国際工事契約とされるFIDICの土木工事契約約款(第4版)1)を例にみてみましょう。
 同約款第49条によると、工事完了(completion of works)時点〔同約款では引継証明書(taking―over certificate)発給時としているので欠陥保証責任期間(defects liability period)終了(場合により、それから14日以内)〕までは欠陥修復(remedying defects)の責任を請負者に負担させる、となっています。欠陥保証責任期間終了時にエンジニアが検査し、その結果 に基づいて請負者に欠陥、収縮またはその他の欠点の修正、改造および修復を指示します。欠陥保証責任期間は、前述の契約条件にもよりますが、1年間程度が普通 です。もちろんこの間の磨耗などはこれには含まれません(契約なのでこの保証期間をもっと長くすることは可能ですが、当然入札価格に影響してくるためプロジェクト費用が大きくなってしまいます)。
 施設が契約書どおりに建設されたとすると、これを適正に運転・維持・管理する責任は相手国実施機関にあります。このためには施設竣工時にコンサルタントおよび工事業者による運転マニュアルの準備とこれに基づいた施設職員の訓練が欠かせません。国内では技量 が高いために運転技術者は設備製造者の用意した機器マニュアルを読みこなして独自に運転管理マニュアルを用意し、訓練ができるでしょう。しかし途上国では運転・維持管理マニュアルを用意するのは外国人技術者の重要な仕事になっています。無償資金協力にJICA専門家派遣を組み合わせて相手国への技術移転をさらに確かなものにしようとする場合もあります。
 JICAでは無償資金協力終了案件の評価と供用状況に関する調査のために、工事完了時の終了時評価、完了後数年経過してからのフォローアップ調査や事後現況調査を行っています。これらは調査によって得られた教訓を今後の新規案件実施に生かそうとするものです。

【出 典】
1)日本コンサルティング・エンジニヤ協会(AJCE)訳:土木建設工事の契約条件書,日本コンサルティング・エンジニヤ協会,1988.

【参考文献】
1)ソイヤー&ジロット(大隈一武訳):FIDIC海外工事契約の知識,鹿島出版会,1987.

(大村 良樹)

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