2.6 人材養成と研修員受入れ


Q45
水道分野の集団研修コースにはどんなものがありますか





  Key words:上水道施設、水道技術者養成、寒冷地水道技術者養成、都市上水道維持管理、上水道無収水量 管理対策

 Q44で述べたとおり、集団研修コースは途上国の共通ニーズをあらかじめ考慮したうえで国内要望調査をもとにコース内容を設定したコースであり、毎年定期的に途上国にオファーされることから、相手国が、その設定されたコースから選んで参加します。しかしながら、途上国のニーズを考慮して設定されたコースとはいえ、多数の国を対象に行われているため気候、経済レベルに対し配慮することが難しいのが現状です。そこで、国別 ・地域別特設コースを設定し、研修員の資格要件をある特定の1カ国あるいは地域に限定することにより、より各国のニーズへ応えようとしています。
 現在JICAによって行われている集団研修、国別・地域別特設コースには次のコースがあります。

1.上水道施設Uコース
(1)目 的
 経営、管理、設計が行える技術者を育成すべく講義および実習などを通じて上水道技術にかかわる知識の修得を図り、各国の上水道制度の向上改善に寄与することを目的とする。
(2)到達目標
 水源から蛇口に至るまでの技術的な講義、実習、見学を行い、安全な水の確保に必要な水道供給計画、水道経営、浄水システム、管路設計、保守および機械・電気設備の技術を修得する。
(3)研修実施機関
 (社)日本水道協会。

2.水道技術者養成コース
(1)目 的
 水源、取水施設、浄水施設、配水施設、給水設備などの全般にかかわる基礎的知識を修得し、これらの総合的な計画の策定方法と施設の運転および維持管理に必要な技術を講義および実習を通 じて修得させ、途上国における清浄な飲料水の確保に寄与することを目的とする。
(2)到達目標
 水道技術の基礎的知識を理解し、わかりやすく説明ができるとともに、水道施設の機能を理解し、自国の建設改良計画および維持管理体制の強化に結びつける。
(3)研修実施機関
 札幌市水道局。

3.寒冷地水道技術者養成コース
(1)目 的
 寒冷地にある途上国の水道技術者を対象に、寒冷地の気象特性とそれに起因する技術的問題への対応に重点を置く。そして、寒冷地における水道の計画、設計、施工、運転維持管理などにかかわる技術を修得することにより、途上国における安全で清浄な飲料水の確保に寄与することを目的とする。
(2)到達目標
 寒冷地特有の水道技術に関連する漏水防止、水質管理、浄水施設、水道計画、配水管構成、設計、施工管理および給水装置についての知識、技術を修得し、自国の建設改良計画および維持管理体制の強化に結びつける。
(3)研修実施機関
 札幌市水道局。

4.都市上水道維持管理コース
(1)目 的
 途上国における既存の都市上水道施設の有効利用を目的として、水道施設の維持管理に携わる技術者または技術系行政官を対象に、大阪市の上水道施設整備ならびに維持管理手法、浄水処理技術などに関する技術を移転することを目的とする。
(2)到達目標
 上水道施設維持管理ならびに浄水処理全般に関する技術を理解し、自国の既存の上水道施設の有効利用のための十分な技術を修得する。
(3)研修実施機関
 大阪市水道局。

5.上水道無収水量管理対策コース
(1)目 的
 上水道維持管理に従事する技術系行政官を対象に漏水を中心とする無収水量 の管理技術を修得させることにより、既得知識および技術の向上を図り、もって当該国の無収水管理に携わる指導者を養成する。
(2)到達目標
 無収水を取りまく諸問題について包括的な理解ができ、漏水探査および修理の基礎的な技術が理解できる。そして、漏水予防対策としての計画、設計、施工の専門的知識および技術を理解する。
(3)研修実施機関
 名古屋市水道局。

 その他、国別・地域別特設コースとして、上水道の漏水対策を主眼とした研修を、ボリビアとボスニア・ヘルツェゴビナをそれぞれ対象としたコースが現在開設されています。
 また、上水道と深い結びつきをもつコースとして湖沼水質保全、水管理、水路測量 、水質環境管理、都市排水、都市型水質汚濁防止、汚水処理などが行われています。

【参考文献】
1)1996年度集団・一般特設&国別特設・CSコストシェアリング,東洋特設・国際機関タイプUコース概要,国際協力事業団,1996.

(斉藤 博康)

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