1.1 水道分野の国際協力の動向と課題


Q5
水道分野の援助では、施設や機材のようなハードを優先させるべきですか、それとも衛生教育や技術訓練などのソフトを優先させるべきですか





  Key words:ハードとソフトclean water

 結論からいえば、水道分野の援助はハードやソフトのいずれにも偏ることなく、両者の均整がとれていることが望まれます。
 施設の建設や機材の供与など、ハードに偏った援助を想定してみましょう。施設があっての水道であることは、誰しも否定できません。しかし、施設だけがあって、それをどのように運転管理すればよいのかを理解していなければ、水道としての本来の機能を期待することはできません。途上国では、施設や機材が不十分なだけでなく、これらを活用できる技術や人材も十分ではないのです。また、わが国がこれまでたどってきた過程を振り返ってみてもわかるように、水道施設の建設には長い年月と莫大な資本を必要とします。このことを途上国の現状と考えあわせてみれば、わが国だけでなく諸外国や国際機関などが少しくらい援助しても、途上国の水道施設整備が容易にはかどらないことはすぐに理解できると思います。
 これとは逆に、衛生教育や技術訓練など、ソフトに偏った援助が望ましくないことも、改めて説明するまでもなく上記のことから明らかでしょう。
 わが国の水道分野における国際協力は、特にハード、なかでも量的な面については満足できる水準に達しているといえるでしょう。しかしながら、ハードの質的な面 および住民参加や衛生教育などのソフト面については、まだ十分といえる状況ではありません。途上国での現場体験をもっと多く積み重ねることによって、適正技術が何であるかを深く見きわめる必要があります。それと同時に、ハードとソフトを有機的に組み合わせた国際協力に関しても、欧米など諸外国や国際機関に比べるとまだまだ未熟です。今後は、限られた国内資源を最大限有効に活用しながら、途上国の水道整備に対する国際協力を効果 的に行う方法を開発することが求められています。

(国包 章一)

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