1.2 水道整備に関連する援助機関とNGO


Q6
水道分野の援助に関連する国際機関などについて説明してください





  Key words:マルチ、国連関連機関、国際開発金融機関、経済開発協力機構(OECD)

 国際機関(いわゆる「マルチ」)による援助は、二国間援助と比べて、@各機関の高度な専門知識や経験を活用できる、A援助の政治的中立性を生かした援助ができる、B世界的援助ネットワークを活用できる、などの長所があります。

1.国連関連機関
 水道分野に関連する機関として次のようなものがあります。
(1)国連開発計画〔UNDP(Q11参照)〕
(2)国連児童基金〔UNICEF(Q12参照)〕
(3)世界保健機関〔WHO(Q10参照)〕
(4)国連環境計画(United Nations Environment Programme:UNEP)
 環境問題に関する国連内外の国際機関の事業に関し総合調整を行うとともに、地球環境のモニタリング、調査、情報収集、情報提供、条約作成作業などのプロジェクト〔たとえば、地球環境監視システム(GEMS)〕を実施しています1)。UNEP国際環境技術センターが大阪と滋賀に設置されています。
(5)国連難民高等弁務官事務所(United Nations High Commissioner for Refugees:UNHCR)
 難民に対して庇護を与えることおよびこれら難民の自主帰還もしくは新しい社会への同化・定住を援助することにより難民問題の恒久的解決を図ることを目的としています1)。たとえば、難民キャンプの設置・運営では、生活用水の供給を含め、難民の生活支援を行っています。
(6)国連人間居住センター(HABITAT or UNCHS:United Nations Centre for Human Settlement)
 ケニアのナイロビに本部を置き、人間居住の開発、全世界の貧困者のための住宅改善運動、国連機構内の人間居住関係活動の調整などを中心として活動しています。主たる活動は、各国政府への技術援助の提供、研究の実施、専門家会議、研究集会、訓練セミナーなどの開催、出版、情報普及などです。途上国での技術協力プロジェクトは、その国の居住政策と居住計画、都市・地域開発計画、農村と都市の住宅および基幹構造の開発、スラム街の改善・一掃計画、低価格の住宅建設技術、都市および農村の上下水道と衛生関係技術の分野にわたっています。

2.国際開発金融機関
 国際開発金融機関とは、世界銀行グループ〔国際復興開発銀行(IBRD)、国際開発協会(IDA)、国際金融公社(IFC)、多国間投資保証機関(MIGA)からなる(Q9参照)〕、特定の地域・分野を融資などの対象とするアジア開発銀行(ADB)、米州開発銀行(IDB)、アフリカ開発銀行(AfDB)、欧州復興開発銀行(EBRD)、国際農業開発基金(IFAD)などの諸機関を総称するものです。
 国際開発金融機関の業務としては、経済・社会開発を目的とした各種プロジェクトへの融資、構造調整計画および特定部門を対象とするいわゆるノンプロジェクト融資、プロジェクトの準備・実施などを支援する技術援助、民間事業への出資・貸付け・保証などがあり、各機関の目的や性格に応じて融資形態・対象、条件などは異なっています。  一般に国際金融開発機関は、その業務を行うにあたり、プロジェクトの側面 を主に考慮し、援助対象国の政治的性格に影響されてはならないことになっていますが、EBRDは性格を異にしています1)。

3.経済開発協力機構(OECD)

 OECDの開発援助委員会(DAC)では、先進国の援助政策について議論を行っています。DACで作成する援助受け取り国リスト(いわゆるDACリスト)は、わが国による援助対象国選定の判断基準となっています。1995年にはリストの見直しが行われています。また、ODA概念の見直し、参加型開発と「よい統治」について議論が行われています。 4.その他の機関  「国際機関」として位置づけられているものではありませんが、情報源などとして有力な機関があります。
(1)IRCWD(International Reference Centre for Wastes Disposal:国際廃棄物処理資料センター)2)
 スイスにあるスイス連邦水資源・水質汚濁制御研究所(EAWAG)のなかに置かれているグループで、開発途上国向きの衛生設備、飲料水処理技術分野で、応用研究、コンサルティング・情報サービス業務、研修・教育といった活動を行っています。
(2)IRC(International Reference Center for Water Supply and Sanitation:国際水道・衛生資料センター)3)
 旧名の頭文字からIRCと呼ばれ、オランダのハーグにある非営利の独立組織です。水供給、衛生設備、環境分野で開発途上国に適正技術に関する技術情報などを供給することを目的としています。特に、Technical Paper Series、Reference Seriesなどの出版物を刊行しています。
(3)WEDC(Water, Engineering and Development Centre)4)
 英国のイングランドにあるLoughborough University of Technologyのなかに設立された組織で、開発途上国における飲料水の供給、低コストのし尿処理技術、ゴミ処理、灌漑、都市インフラストラクチャー整備などの分野で活動しています。活動形態は、教育・研修、研究、コンサルティング、情報伝達で、Resource Centreと呼ばれる資料センターを有しています。
(4)ITP(Intermediate Technology Publications )5)
 Intermediate Technology Development Group(ITDG)が手がけている「中間技術」などの分野に関する資料を編集・出版しているのがITPです。環境衛生分野では、rural water supplyに関する情報が多く、専門雑誌として、Waterlines―Appropriate Technologies for Water Supply and Sanitationsを出版しています。ロンドンにブックショップもあります。
(5)ENSIC(Environmental Systems Information Center)6)
 タイのバンコクにあるAsian Institute of Technology(AIT)内の図書情報センター傘下の機関で、環境保全や衛生環境改善分野で、出版、短期研修コースの運営、ワークショップの開催、コンサルタント業務などを行っています。
(6)SKAT(Swiss Centre for Development Cooperation in Technology and Management)7)
 スイスのザンクトガレンにある協会で、エネルギー、水供給とし尿処理、手押しポンプ、建築・建設材料などの分野の情報伝達、出版、技術協力などを行っています。特に、ネットワーキングに力を入れています。
(7)IIED(International Institute for Environment and Development)8)
 イギリスのロンドンに本部があり、住民参加型の調査手法の情報源で、研修教材作成、ニュースレター発行などを行っています。

【出 典】
1)外務省経済協力局編:我が国の政府開発援助(ODA白書 上巻),国際協力推進協会,p353−363,1995.
2)国際環境計画通信 newsletter No. 2,東京大学工学部都市工学科国際環境計画(クボタ)講座,Apr. 1993.
3)国際環境計画通信 newsletter No. 3,東京大学工学部都市工学科国際環境計画(クボタ)講座,Aug. 1993.
4)国際環境計画通信 newsletter No. 5,東京大学工学部都市工学科国際環境計画(クボタ)講座,Apr. 1994.
5)国際環境計画通信 newsletter No. 6,東京大学工学部都市工学科国際環境計画(クボタ)講座,Aug. 1994.
6)国際環境計画通信 newsletter No. 7,東京大学工学部都市工学科国際環境計画(クボタ)講座,Dec. 1994.
7)国際環境計画通信 newsletter No. 8,東京大学工学部都市工学科国際環境計画(クボタ)講座,Apr. 1995.
8)アーユス「NGOプロジェクト評価法研究会」編:小規模社会開発プロジェクト評価,国際開発ジャーナル社,1995.

【参考文献】
 海外の援助機関のインターネットアドレスは1)を参照してください。
1)国際環境計画通信 newsletter No. 10,東京大学工学部都市工学科国際環境計画(クボタ)講座,Feb. 1996.
2)外務省編:国際機関総覧,日本国際問題研究所,1996.
3)湖沼環境保全に関わる国際協力,環境庁水質保全局/国際湖沼環境保全委員会,1995.  
 (二国間援助機関についても記述あり).

(渡辺 泰介)

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