1.2 水道整備に関連する援助機関とNGO


Q7
主な二国間援助機関による水道分野の援助について説明してください





  Key words:二国間援助、DAC加盟国、USAID

1.二国間援助の実施国
 二国間〔いわゆる「バイ(bilateral)」〕援助を行っている国は4つのグループに分けられます。最大のグループは、OECD/DACに加盟している21カ国(1994年現在)と欧州連合(EU)です。第二のグループは、共産圏経済相互援助会議(いわゆるコメコン)ですが、資金のほとんどは旧ソ連に依存し、1988年には援助総額の約9%を占めていましたが、現在は援助を行っていません。第三はアラブ諸国による援助で、そのうち最大の拠出をしているのはサウジアラビアです。第四のグループは、途上国で援助を行っている国で、中国やインドのほか、近年は韓国、台湾なども援助を行っています1)4)。
 国ごとに援助内容、援助機関は異なるので、援助国、援助機関の概要は、たとえば出典1)、2)、参考文献1)を参照してください。

2.DAC加盟国
 各国の重点の置き方はそれぞれ違いますが、援助政策には概して3つの基準があります。すなわち、商業的採算性、政治的かつ戦略的(political―cum―strategic)重要性、それに開発の必要性という基準です。アメリカは、二国間援助を明白に「戦略上」の観点から行い、イギリス、フランスなどは、旧植民地が重点的な援助供与国となっています。オーストラリアとニュージーランドは、太平洋諸国と強い援助関係を保っています。北欧諸国、オランダ、カナダはlike―minded donorsであり、援助は開発を目的とするものでなければならないと考え、恵まれない国々に対して特に深い関心を示しています1)。
 贈与比率、アンタイド率、重視する分野(たとえば、民主化、人権などの「よい統治」)など、国により特徴があります。

3.USAID(United States Agency for International Development)の水道・衛生分野の援助3)
 ODA額で世界第2位であるアメリカの主要な援助実施機関であるUSAIDの援助について紹介します。
(1)USAIDの水道・衛生のポリシーペーパーの概要
 1) USAIDが投資を考える前提条件
 1人1日最低20〜40の安全な水が手に入ることが、途上国での保健の改善に不可欠である。したがって、USAIDはこの最低量 が容易に得がたい場所、また、し尿の衛生処理の不備により著しい保健衛生問題を抱えている場所において、これらの状態を改善するためのプロジェクトが提案された場合には投資を検討する。
 2) USAIDの投資実施判断基準(T)
 飲料水と衛生の改善に対して、社会的必要性と具体的需要が証明されていること。
 @その必要性は、水が量的に不十分なこと、高度に汚染した水を用いていること、あるいは衛生処理の不備によって疫病が蔓延していることが明確に証明されなければならない。
 A具体的需要は、サービス供給に伴う維持・管理費用を受益者が負担する意思があり(料金、受益者負担金、国・地方の財源を合わせて)、既存システムの改善と新システムの建設投資コストの一部を負担する意思があることが証明されなければならない。
 B受益者は上記Aの負担はできないが、必要性が顕著な場合には、政府が代わって投資資金のかなりの部分と、当面 の維持・管理費用(健全な財政基盤確立までの短期間)を負担するとの意思表示をしなければならない。
 C上記ABのいずれの場合においても、USAIDは、妥当な過渡期間を経た後においても、受益する地域共同体が維持・管理費用を自ら負担する意思と能力をもちうる保証がない場合には資金助成を行わない。受益者が負担することによって初めて、長い期間にわたり施設が維持できるからである。
 3) USAIDの投資実施判断基準(U)
 担当機関に必要な権限と能力が備わっていること。
 @飲料水供給・し尿の衛生処理の地方レベル、あるいは国レベルの担当機関が、改善するシステムの建設・拡張・維持・管理に必要な権限・人員・予算を備えていること。
 A上記@が無理な場合においては、外部からの過度にわたらない支援があれば、責任を果 たしうる状態にまで、機構の強化がなされるという保証が最低限必要である。
 4) USAIDの投資実施判断基準(V)
 プロジェクトを支えるインフラストラクチャーが備わっていること。
 @管理、技術アドバイス、保守、修理部品・燃料の供給の目的で、当該受益地域共同体と定期的に接触することができる程度にまで、道路・その他の輸送手段・通 信手段が整備されていること。
 Aあるいは採用する技術システムが、外部からの助力なしに維持しうるようなものであること。
 5) USAIDの投資地域
 USAIDは、開発途上国において安全な飲料水と衛生処理を最も必要としている人たち、すなわち農村部と都市スラムの居住者を対象とするプロジェクトに対し、優先的に資金助成することを基本方針とする。
(2)WASHプロジェクト
 USAIDは、コンサルタントとの契約により、WASH(Water and Sanitation for Health Project)プロジェクトを実施しています。これは技術協力プロジェクトで、現場からの要請により、短期のコンサルタントサービス、人材養成、情報提供などを行うものです。情報の収集・提供については、WASH調査情報センターを設けており、また、多くのtechnical report、field reportを出版しています。

【出 典】
1)ブラウン S:国際援助:歴史 理論 仕組みと実際,東洋経済新報社,p147,1993.
2)外務省経済協力局編:我が国の政府開発援助(ODA白書 上巻),国際協力推進協会,p280,1995.
3)水道・衛生分野の技術移転:援助活動の動向と情報,国際協力事業団国際協力総合研修所,p48―57,1989.
4)Development Co―operation 1994 Report, OECD, Paris, 1995.

【参考文献】
1)海外経済協力基金・開発援助研究所:海外経済協力便覧(1995),海外経済協力基金,1995.
2)Lessons Learned in Water, Sanitation and Health: Thirteen Years of Experience in Developing Countries, USAID Water and Sanitation for Health Project, Virginia, 1993.

(渡辺 泰介)

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