2.6 人材養成と研修員受入れ


Q50
水道技術を教える訓練センタープロジェクトは、どのような条件がそろえば実施可能性がありますか





  Key words:プロジェクト方式技術協力、水道技術訓練センタープロジェクト、NWTTI、WSESTC

1.プロジェクト方式技術協力とは
 JICAの技術協力は、開発途上国が必要とする分野の技術移転および技術の普及を行い、相手国の人材育成に協力することを目的にしています。そのなかの一つの協力形態としてプロジェクト方式技術協力があります。これは相手国が計画した特定の目的をもった事業(プロジェクト)に対し、@専門家の派遣、A研修員の受入れ、B機材の供与、の3つの要素を組み合わせてパッケージ化し、計画の立案から実施、評価までを一貫して運営・実施する技術協力です。実施にあたっては、この3つの要素に加えて、専門家の現地における技術移転・普及活動を活性化するための支援経費(ローカルコスト)の負担を組み合わせます。
 「プロジェクト方式技術協力」がめざす協力は、大きく分けて、@相手国の経済的自立発展を促すための協力、Abasic human needsの充足をめざす協力(保健・医療の充実、食糧増産、環境保全・防災など)です。このほかに最近では、B人づくりの基礎となる教育、特に初等・中等教育の拡充にも力を注いでいます。水道技術訓練センタープロジェクトは、このうちのAに該当しますが、一部Bにも該当しています。
 技術協力活動に際しては、協力の枠組み(スキーム)としての「運営管理」(マネージメント)と協力の中身である「技術移転」の活動が大きな業務内容となります。これらの業務を効率的、効果 的に行うために「促進業務」が重要となります。
 プロジェクト協力の日本側チームは、チームリーダー、調整員および各分野の専門家(長期・短期)で構成されます。

2.センタープロジェクトの条件
 水道技術訓練センタープロジェクトは、タイのNWTTI、インドネシアのWSESTCおよびエジプトで実施されました。これらの実績をもとに今後プロジェクト方式技術協力が要請された場合、実施の条件としては以下のものが考えられます。
(1)相手国が要請段階から明確なプロジェクトの目的をもち、かつ、その内容が具体的であること。また、そのプロジェクトが相手国側の国家開発計画のなかで十分活用され、その成果 が見込めること。
(2)プロジェクト方式技術協力は、政府ベース協力の一環として相手国からの正式協力要請を受理した段階から具体的な手続きを開始する。しかし、途上国のなかには計画策定能力が十分でない国も少なくないことから、計画策定の段階から能動的、積極的に協力することもある。このような場合には事前調査などにより相手国のニーズを的確に把握するとともに、在外公館、JICA在外事務所、相手国関係組織などを通 じて情報の収集と提供を行うことによって、優良プロジェクトを発掘・形成することも必要である。
(3)プロジェクトの実施に関してGNPによる基準は特にない。ただし、比較的1人あたりGNPが低いほうが実施の可能性は高いともいえるが、逆にあまり低すぎると相手国側の受入体制が十分とれない場合がある。ちなみにNWTTIプロジェクト・フェーズ2では2040ドル(タイ、1993年度)で実施された。
(4)プロジェクトの内容によっては、相手国の資金面での制約から、わが国の無償資金協力による建物・施設などへの協力が必要なこともあるため、これらの情報を事前に把握して他の資金協力との連携の可能性を考慮しておく必要がある。ただし、無償資金協力は相手国の1人あたりGNPが高い場合は供与対象国にはならない。1997年度については、1995年の1人あたりGNPが1465ドル以下となっている。また、これ以外にも、有償資金協力、個別 専門家派遣事業などとの連携について考慮することも重要である。
(5)協力の規模に明確な基準はないが、一般的には原則3〜5年の協力期間内に専門家派遣数年間5〜10人、研修員受入総数10〜20人、機材供与額2〜5億円程度である。
(6)専門家派遣に際して日本側の国内支援体制が整っていることが重要となる。その大きな柱の一つとして、通 常、国内協力機関の関係者、関連技術分野の専門家、学識経験者などで構成される国内委員会が設置される。国内委員会は専門家が現地活動を円滑かつ効果 的に行えるよう、技術上、運営上の諸問題を検討・協議し、JICAに対して適切な助言を与える。
 水道の技術協力の場合には比較的人材の豊富な大都市水道事業体の職員を中心として派遣されることが多いようです。これらの事業体では現在実施中のプロジェクトや個別 に専門家を常時複数人派遣していることが多く、新たに派遣できる人材に余裕のない場合があります。プロジェクト方式技術協力の場合は長期にわたり多数の専門家を派遣しなければならないため、厚生省、JICA、派遣元事業体などは互いに協力して計画的な派遣計画を立てるとともに、多くの事業体などから新たな人材を発掘することも重要となります。

【事例プロジェクト名】

タイ「水道技術訓練センター計画」
インドネシア「水道環境衛生訓練センター計画」

【参考文献】
1)プロジェクト方式技術協力の手引,国際協力事業団国際協力総合研修所,1989.
2)プロジェクト方式技術協力,国際協力事業団,1994.

(山崎 章三)

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