2.6 人材養成と研修員受入れ


Q52
ある途上国の研修生を第三国研修に送るにはどうすればよいですか





  Key words:第三国研修、開発途上国間技術協力(TCDC)

1.第三国研修とは
 第三国研修とは、社会的、文化的・言語的に共通の基盤をもつ一定の開発途上国地域内に、研修実施国(host country)と、近隣諸国からのニーズのある研修分野を選定し、そこに地域内の途上国からの研修生(研修員)を受け入れて、より現地事情に適合した技術・知識の移転を図る形態です。
 開発途上国間技術協力(TCDC)の推進を図り、将来は実施国が独自に研修員受入事業を実施できるよう援助・協力することを目的としています。
 本事業は、昭和50年3月、タイのコラート養蚕研究訓練センターで初めて実施されて以来、その有効性が認められ、昭和55年 5コース、昭和60年 22コースと年々拡充されており、平成 6年度には86コース(集団研修)が実施されました。
 第三国研修は、主に、@プロジェクト方式技術協力、無償資金協力、個別専門家派遣など、わが国(JICA)が何らかのかたちで協力している機関において実施していますが、このほかに、Aわが国の技術協力とは直接関係のない実施国独自の機関、または国際機関で研修を実施している場合もあります。
 第三国研修を実施するメリットは、@研修が開発途上地域で行われることにより、周辺国のニーズにより適合した研修を行うことができる、A本邦研修に参加する機会が少ない国(割当人数が少ない国)からの研修を容易にする、B同種の研修を本邦で実施する場合に比べてコストが安い、C社会的、文化的、言語的差異が少なく、効果 的な研修を行うことができる、Dわが国の技術協力の成果を対外的に広くPRでき、かつ、実施国のプレステージと研修実施にかかわる主体性、自主性の高揚を図ることができる、などです。

2.第三国研修実施にかかる業務
 第三国研修は、基本的にはプロジェクトと同様、協議議事録(R/D)の締結により毎年度1回継続的に研修を実施するものです。一般 的には、1開催が6週間程度で5年間継続して実施します。
 その運営は、R/Dに基づいて実施国が主体的に行い、日本側が講師としての短期専門家の派遣や、実施経費の負担などにより援助、協力するという形態です。
 第三国研修運営の具体的内容は、ホスト国(実施国)の実施機関が企画立案から研修予算の策定・申請、プログラムの作成、実施国内講師の手配、日本側講師の派遣要請、研修生の招待、研修の実施・運営、研修報告などの事務手続きなど一切を行うものです。しかし、その舞台が海外にあるため、JICA関係各部、外務省および関係省庁などの国内支援体制に加え、JICA在外事務所、在外公館など、実施国における日本側の協力体制が不可欠です。
 なお、研修実施にかかる実施国側と日本側との業務・経費負担は次のとおりです。
(1)実施国側の負担
 1)研修施設、機材
 2)研修カリキュラムの作成
 3)講師、コーディネーターの手配
 4)募集要項(ジェネラルインフォメーション:GI)の作成、送付
 5)研修生選考など日本側が分担しない経費
(2)日本側の負担
 1)短期専門家の派遣
 2)研修カリキュラム、GI作成や研修生選考に対するアドバイス 
 3)研修生の受入経費(航空賃、滞在費など)
 4)研修経費(外部講師謝礼、現地傭人費、交通費、消耗品購入費、会議費など)
 (実施経費は集団研修実施機関が受託管理のうえ、終了後清算する) 

3.研修生を第三国研修に送るには
 ある分野で派遣されている専門家の任国機関の職員を研修生として第三国研修に参加させるには、専門家の任国がR/Dに取り付けてある被割当国(被招待国)になっていることが条件となります。
 実施国は実施計画策定後、被割当国に研修参加の応募・招待状を送付し、その参加申込み状況により、全体枠の調整をして受入れを決定します。
 任国が被割当国になっているか否かは、任国のJICA事務所を通じて実施国のJICA事務所に問い合わせるか、任国機関から実施国の機関に問い合わせて情報をとる必要があります。

【事例プロジェクト名】
タイ「林野庁造林研究訓練センターにおける第三国研修」
タイ「水道技術訓練センターにおける第三国研修」

【参考文献】
1)国際協力事業団企画部:国際協力事業団業務のしおり,国際協力事業団,1993.

(石田 寅三)

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