2.7 専門家派遣


Q58
派遣専門家をバックアップする方法について説明してください





  Key words:派遣専門家、カウンターパート、短期専門家、機材供与

 派遣専門家が支援を求める方法および専門家からの支援要請に応える方法について形態別 に分類して考えてみます。

1.電話、FAXなどによる日常的な支援
 日常的な支援としては、電話やFAX、電子メールなどにより、国内の有識者に連絡して情報や助言などを求める方法があげられます。
 途上国に派遣される前に、自らが保有していない知識や技術に関する情報が必要となった場合にバックアップを依頼するルートは、必ず確保しておきたいものです。通 常は、所属先である水道事業体や前責任者に依頼する場合が一般的ですが、当該水道事業体などで入手困難な情報である場合には、厚生省、国立公衆衛生院、JICA国際協力総合研修所国際協力専門員などに直接照会することも重要です。日本人の社会習慣として面 識がない人にいきなり質問することをためらう人も多いと思われますので、専門家の派遣前研修などの機会をとらえて、あらかじめ連絡をとり、協力を依頼しておくとよいでしょう。
 また、途上国に派遣されている専門家同士で連絡をとり合い、相互に情報交換を行うことも有効な方法です。海外で活動中の水道分野の専門家の連絡先については、厚生省で入手することができます。
 連絡手段として、最も手軽なものは電話ですが、時差や依頼内容の的確な伝達、相手方の都合などを考えた場合には、FAXや電子メールによる方法が効率的と思われます。

2.技術協力の一環としての支援

(1)カウンターパートの研修
 専門家のカウンターパートに対し、わが国で研修を実施することにより、技術移転の促進を図るものです。
 日本での研修を受講したことによって、移転対象技術に対するカウンターパートの理解が深まったとか、職務に対する熱意が変わったという話をよく耳にします。わが国でのカウンターパートの研修は技術移転を支援するうえで非常に有効な手段であるといえるでしょう。一方、研修内容について、1カ所に長期間滞在して技術を収得する研修のほうが望ましかったとか、各研修先における研修内容に似通 ったものが多かったというような感想が聞かれることもあります。研修内容の基本的な構成を考えるのは派遣専門家の役割になりますので、日本の研修受入機関とよく連絡をとり、それぞれのニーズに合わせた内容を検討することが必要でしょう。
 なお、カウンターパートをわが国で研修させる方法としては、カウンターパート研修として個別 に設定されるもののほか、既設のJICAによる集団研修コース(上水道施設Uコース:(社)日本水道協会、水道技術者養成研修コースおよび寒冷地水道技術者養成コース:札幌市水道局、都市上水道維持管理コース:大阪市水道局、上水道無収水量 管理対策コース:名古屋市水道局)や厚生省の委託事業としてJICWELSが実施している水道管理行政官研修に参加させる方法があります。後者の場合には、事前に研修実施機関と連絡をとり、候補者選定の際に配慮してくれるよう協力を求めておくとよいでしょう。
(2)専門家の派遣
 わが国から短期専門家としてセミナー専門家を派遣することにより、長期専門家による技術移転を支援するものです。
 技術移転に必要な業務の内容が、質的または量的に長期派遣専門家の能力を超える場合、短期専門家を派遣することが重要かつ効果 的です。ただし、専門家派遣に関する途上国側での要望の締め切りは、実際に派遣を要望する前年度の夏ごろである場合が一般 的ですので、専門家は長期的な活動計画のなかで短期専門家の派遣要請を考えていくことが必要になります。また、途上国で取りまとめられた要望調査表は日本に送付されたのち、毎年度末に、外務省、厚生省およびJICAによる協議が行われ、翌年度の専門家派遣計画が決定され、年度初めに途上国側に対し提示されることになりますので、あらかじめ関係者に要望の趣旨を十分に伝えておくことが望まれます。
 セミナーの開催は、短期間に途上国の関係者全体のレベルアップを図るための有効な手段となります。セミナー専門家は短期専門家の一種ですので、途上国側では、他の短期専門家と同様、長期的な活動計画のなかで派遣要請を考えておく必要があります。また、どのような内容の講演を行うために、どのような専門家の派遣を要請したいのか具体的なイメージを固め、その意図を日本側に伝える必要があります。近年、目的意識の明確でない似通 ったテーマのセミナーが繰り返し行われている場合があると批判する声もありますので、この点には十分注意する必要があります。
(3)機材供与
 技術訓練や技術移転に必要な機材を供与することにより、専門家の活動を支援するものです。
 在外公館を通じた途上国政府の要望調査結果をもとに外務省が実施計画を作成し、実施案件が承認されます。その後、相手国政府からの正式要請の手続きを経て、JICAにより機材調達が行われますが、調達業務には通 常半年程度が必要なようです。
(4)各種援助案件の調査団による支援
 専門家の派遣先で開発調査や無償資金協力などの援助案件が実施されることとなった場合、それぞれの案件自体が技術移転の支援につながることはもちろんですが、それ以外にも、各案件に関連してわが国から派遣される調査団に参加している有識者から、専門家自身が指導助言を仰いだり、派遣先機関の幹部などに対し専門家が日常の業務において支障を感じている事項などについて直接意見を述べてもらうことなどによって、専門家の活動を支援することができます。事前に調査団のメンバーと十分連絡をとり、チャンスを最大限活用することが望まれます。

(本多 裕孝)

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