2.8 資機材供与


Q60
給配水管・メーターなどを供与し、相手国側が敷設・設置するような場合に配慮すべきことは何ですか





  Key words:資機材供与、市場性

1.相手国の水道事業に則した資機材供与
 資機材の用途について、技術面での実現性・持続性を確認することが基本です。具体的には、相手国側の実施機関によって無理なく長期に供与資機材が使用されるために、次のような配慮が必要です。
(1)実施機関の技術レベル
 1)現場での敷設・設置技術の実態
 実施機関が供与資機材を敷設・設置するため、従来の工法とは異なる新たな技術を取り入れ、適切に供与資機材を取り扱うことはまれです。また、既存施設への接続部の機械・電気的な規格が、供与資機材の規格とは異なる場合があります。供与する資機材は技術的な問題を解き、実施機関の現場経験を重視した資機材の形式選択と、既存施設との接続部品を含めた供与範囲が重要です。
 2)維持管理技術の内容
 実施機関による維持管理の実施は、対象事業の持続性に大きくかかわる要素です。この維持管理が、可能な限り簡単で確実に実施されるよう、維持管理に関連する組織・技術者・施設・経費などの確認が必要です。測定機器などの読みとり単位 については、現在もフート・ポンド法やそれぞれの独特な単位などを用いている国もあり、国際単位 と実施機関が管理している単位を、併記または切替えが可能な機種を選定することも重要な配慮事項の一つです。
(2)市場性
 1)現地市場性
 「被援助国の自助努力を支援する」ことは国際協力の重要な基本姿勢であり、相手国事業の自立を促すきっかけにもなります。しかし、援助計画に対する相手国側の事業費や実施機関の予算実状などからスペアパーツを消費する数量 が多くとも、比較的安価で短納期であるものは実施機関で自己調達しやすく、反対に高価・長納期であるものは新規購入承認されにくいことが多いようです。現地市場性にかかわる資機材調達の調整では、資機材の調達国や製造メーカーおよび価格・納期などの状況を十分に理解し、しっかりした選択理由を明確にすることがポイントとなります。
 2)業者によるアフターサービス
 供与する資機材の修理・スペアパーツが特殊部品である場合、少なくとも援助計画が対象とする事業実施期間中は新規調達部品が必要ない員数を確保すべきであり、かつ追加が必要な特注部品は同価格・同納期で実施機関が追加調達できるよう、発注者と業者の間で担保させることが必要です。このスペアパーツなどの追加調達と前述の現地または第三国調達の条件は、機材調達にかかわる入札図書に反映させ、本体事業の持続性を高める要素とします。

2.過去の事業形態を重視した負担配分
 相手国側の事業実施について、行政的な実現性と持続性を過去のトレンドから確認することが基本です。具体的には、相手国側の実施機関によって無理なく長期に事業が推進されるため、次のような確認を必要とします。
(1)実施機関の業務形態
 被援助国の業務動向から、過去から引き続いて実施している事業か、あるいはすでに着手している事業が、確実に相手国の負担部分を担保するための条件です。また、新規事業計画にかかる相手国側の負担範囲を確認するためには、実施機関自身の管轄範囲をまず明確にし、実施機関によってハンドリングできない事項については、関連する各公共機関から各負担事項の確認を取り付けることが必要です。実施機関と対象事業に関連する機関の行政的な内部調整は相手国側がすべき内容ですが、わが国にとっても本体事業の成否にかかわる重要な事柄であるため、必ず確認する必要があります。
(2)事業運営体制
 実施機関の組織は、その国の情勢を反映してある程度調整された結果の体制です。新たな組織をつくることは非常に労力がかかり、技術者と管理者を外部から確保すると、事業の着手時期に円滑な組織運営が難しくなりがちで、事業当初からの立ち遅れの原因になります。可能であれば、実施機関の内部的な人事異動程度ですむような事業運営体制が無難です。
(3)事業予算
 実施機関の事業予算は、組織と同様にその国の情勢を反映しています。国や行政によって、その年次予算の編成方法は異なりますが、やはり実施機関の業務体系や事業運営体制と同様に、過去5年間程度の予算状況と各事業内容を比較し、本事業にかかわる今後の動向を確認する必要があります。新たな予算を確保することは非常に大変なことで、可能であれば実施機関の内部的な予算配分程度ですむような事業費の負担割合が無難です。

【事例プロジェクト名】
パキスタン「バロチスタン州地下水開発計画」

(崎山 信勝)

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