2.8 資機材供与


Q61
井戸建設用に供与した資機材が適正に活用されるために配慮すべきことは何ですか





  Key words:井戸建設、掘削機械、水理地質調査機器

〈技術面での適正活用〉
 井戸建設用に供与した資機材を、運営面と技術面で適正活用されるべく配慮します。運営面 では、機材の耐用年数に相当する期間中、実施機関への予算配分などの地下水開発事業費が担保されていることが必要です。また、技術面 では、資機材側・使用者側の井戸建設工事に対する適合性です。資機材側の配慮事項は、掘削機械(以下、リグ)の能力規模と井戸建設用の支援機材です。一方、使用者側の配慮事項は、井戸建設技術者の技量 です。
(1)適正なリグ能力
 削井用の建設機械というとリグを指すほど最重要の要素です。リグ以外の機材で代用できない機能は掘削することで、井戸構造の設計と削井工法の選択を留意します。
 1)地質条件と井戸構造
 井戸構造を単体としてみれば、その地質条件と井戸構造に適応したリグ能力が選定できます。しかし、長期的な地下水開発計画を実施するためには、地質状況と井戸構造を最大公約的にまとめ、数機種のリグを選択することが経済的です。
 2)削井工法の選択
 リグを選定する時、まず「削井工法」を選択します。削井工法は、掘削要素からおおむね表1のように分類でき、計画対象地域での井戸構造と地質状況を加味して選択します。
(2)有効な支援機材
 たとえ1本の井戸であってもそれを適切に建設するためには、地下水の多寡を調査する機器・リグ以外の削井支援機材・井戸建設全般 を管理するための機材などが必要になります。
 1)水理地質調査機器
 地下水の多寡・質を地下水開発の各段階で推定または確認するために、削井の工事前・中・後に調査を行います。これらの調査機器は、地下水調査の目的・規模と自然状況により、おおむね表2のように分類できます。
 2)井戸建設用支援機材
 井戸の建設はまず第1工程で掘削し、第2工程では井戸構造としての材料を建て込み、最後に第3工程として地下水を揚水する井戸として仕上げます。各工程で必要となる支援機材およびその輸送機材をまとめると、おおむね表3のようになります。
 3)井戸管理用機材
 地下水開発計画にかかわる地下水調査・削井・井戸の維持管理には、各用途に応じて必要な業務があります。まず全般 に必要となるのは管理用の車輌で、ほとんどの計画対象地域で4輪駆動が必要です。また、実作業面 で解析・統計処理やG.P.S.を簡便にするコンピューターが必要です。地下水開発の資料・報告書などを確実に管理すれば、将来の地下水開発に役立ちます。
(3)削井関連の技術者
 地下水開発に関する技術者は、大きく水理地質・削井・機材維持管理に分かれます。各技術者は、以下の要素が必要となります。
 1)技術者レベル
 各分野の技術者とも、現地での地下水開発規模に適した技術レベルであることが必要です。具体的には、
 @水理地質技術者:調査機器の使用、資料の解析・判定、井戸仕様の設計。
 A削井技術者:機材能力範囲内での適正活用、適格・安全な現場運営。
 B機材維持管理技術者:機材機能の知識、機械工学の知識、応急修理などの知識・経験。
 2)バランスのとれた技術者数
 地下水開発機材を稼働させるため、削井技術者は充実している実施機関が多いようです。しかし、時に削井技術者と比較して水理地質・機材維持管理の技術者が不足している場合があり、機材の稼働率から技術者のバランスを判定・提言することが必要です。
 3)他分野の技術者との連携
 地下水開発には水を利用する目的があり、水道計画では水処理・水供給量との連携、また農業計画では灌漑方式・灌漑量 との連携が不可欠です。これら他分野の技術者との情報交換によって、効率的な水利用計画が実施されるべく配慮します。

【事例プロジェクト名】
 パキスタン「バロチスタン州地下水開発計画」

(崎山 信勝)

表1

表2.3

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