2.9 援助の評価
Q64 わが国が実施している援助の評価活動について説明してください
Key words:自立発展性、終了時評価、事後評価、プロジェクトサイクル、事業評価報告書、経済協力評価報告書
1.評価の目的
すべての事業は計画・実行・評価という基本行動から成り立ちますが、JICAが行う途上国技術協力事業も同様です。特に開発を進めるうえで困難な条件を多くもつ途上国で事業を行う場合には、その成功は難しく、より効率的・効果 的な援助プロジェクトの実施、さらには援助終了後の自立発展性をめざした協力を推進するために事業評価が重要となっています。 JICAでは1981年に評価検討委員会を設け、1990年には企画部に評価監理課の設置、1991年には5事業について評価ガイドラインを作成し、さらに1997年には業務の総合的な評価とその対策を司るため評価監理室を設置し、評価活動の充実を図ってきました。 評価の目的は、
(1)計画した目標を達成し、成果を上げたかどうか、事業の変更や追加が必要ないかどうかを判断し、
(2)評価の教訓・提言を新たな案件にフィードバックさせる
ことです。
2.評価方法
さまざまなプロジェクトをいつ、誰が、どのように評価し、それをどう生かすか、JICAでは一貫した評価を行うことを目的とし、DAC加盟諸国、国際援助機関が使用している評価手法と共通 性をもたせています。 (1)評価の際に次の5項目基準を決めています。
1)目標達成度(effectiveness)
当初計画されたプロジェクトの目標に対して達成された成果を検討します。
2)効果(impact)
プロジェクト実施により生じる直接的、間接的プラス・マイナス効果を検討します。
3)実施の効率性(efficiency)
プロジェクトの「投入」から生み出される「成果」の程度を把握し、手段、方法、期間、費用などの適切度を検討します。
4)計画の妥当性(rationale)
相手国のニーズが的確に把握され、評価時においてもプロジェクトの目標が有効であるかどうかを検討します。
5)自立発展性(sustainability)
プロジェクトによってもたらされた成果や開発効果が、プロジェクト終了後も持続されているかどうかを把握し、実施機関の自立度を運営管理、財務、技術、その他諸側面 から検討する。
(2)評価の種類
現在JICAが行っている評価には「終了時評価」と「事後評価」があり、計画から評価までのプロジェクトサイクルのなかでの位 置づけは図1のとおりです。
1)終了時評価
プロジェクトの終了近くに当初目的の達成度や自立発展の見通しを確認し、終了後に引き続き延長やフォローアップが必要かどうかを調査します。担当はプロジェクト実施事業部、または在外事務所が行います。
2)事後評価
プロジェクト終了後一定期間たってから行う評価で、案件の計画段階からプロジェクト終了後の相手国の運営管理段階まで含めて、その効果 などすべての評価を行うもので、評価結果は次の類似案件にフィードバックさせ、プロジェクトの質的向上を図ることを目的としています。担当は評価監理室と在外事務所が行い、在外事務所は個別 案件を対象とし、評価監理室は複数案件を横断的に評価するもので、次のような評価があります。 @個別評価:当該国の援助実施の協力効果および問題点を整理します。
A特定テーマ評価:テーマを設定し、幅広い視点から評価します。
B第三者評価:評価の客観性をもたせるために、第三者による調査を行います。
C合同評価:当該国の関係者と、または他援助機関と合同で評価します。
各プロジェクトの評価結果の一部については以前よりJICA国際協力総合研修所図書館で公開されていましたが、1995年より事業評価報告書としてまとめられ発行されています。またJICA以外のODA事業も含めて外務省が「経済協力評価報告書」にプロジェクト評価をまとめています。
【参考文献】
1)事業評価報告書,国際協力事業団,p1―3, 1995.
(山本 敬子)
図1