3.2 水道とサニテーション


Q70
サニテーションと下水道はどう異なるのですか





  Key words:サニテーション、下水道

1.サニテーションの概念
 まずサニテーション(sanitation)といわれるものの概念について述べます。下水道や浄化槽といった具体的な用語と異なり、サニテーションはやや抽象的な概念をもっています。日本語においては、衛生環境整備とでもいうような定義が与えられています。アーバンサニテーションという場合には、都市生活にかかわる衛生環境整備ということになり、広義の意味で下水道整備を含め議論されることがあります。浄化槽など個別 のし尿処理施設から廃棄物の収集、処理、処分までを含めて議論されることがあります。一方、単にサニテーションという場合には、狭義にし尿処理施設の整備に限定する場合が一般 的です。
 次に、サニテーションと下水道には、それぞれon―site treatmentとoff―site treatmentという処理法式に基づく分類が与えられています。前者は個別の家庭用浄化槽などに代表されるようにし尿などの発生源で処理する方式を指し、後者は下水道のようにパイプラインを通 じて下水などを発生源から離れたところに排除して処理する方式を指しています。日本の団地などに設置されているコミュニティプラントはこれらの中間に位 置するものといえます。

2.サニテーションと下水道
 さて、サニテーションと下水道はどう異なるのかという質問に対しては、上記の説明が回答の態様を示すといえるでしょう。途上国を対象として実施されるサニテーションに関するさまざまな調査・計画は上述した狭義のとらえ方が主体となっているといえるでしょう。
 下水道を整備する場合、通常10〜20年後の都市の将来像を想定して事業計画を策定しますので、対象地域の下水道整備が完了するまでには相当の時日を要することになります。そこで問題となるのが、下水道の整備対象地域に含まれてはいても、下水道のパイプラインに各家庭が接続されるまでの中間的対応策としてのサニテーション、すなわちし尿処理の問題です。下水道に接続できなくても、各家庭にはトイレがあるわけですから、ここで発生するし尿を衛生的に処理し、浄化槽で発生する汚泥を収集、処理、処分することが課題となります。
 とりわけ、途上国において下水道事業を推進する場合には、人口の稠密度、投資効果 の高い地区が当面の整備対象地区となる一方、周辺地区はやはり個別のし尿処理で対処することが必要となります。また、経済的事情から、本格的な下水道整備を施行できない場合、各家庭のし尿浄化槽や腐敗層の越流水を小口径の管轄を通 じて排除し、処理施設で集中処理するといった便法も適用されています。

(辻 良)

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