3.3 水道とWID


Q75
水道分野におけるWID配慮の基本的考え方を説明してください





  Key words:WID、WID配慮

1.水道分野とWID
 水道の開発は女性と密接にかかわっています。まず、ほとんどの国で水汲みが女性の仕事であること、また水利用において炊事、洗濯などが女性の仕事であること、家事や子供の養育が女性の役目であることから、子供を清潔にする、家を衛生的にすることなど女性の意識によるところが大きいのです。水道の開発によって女性が最も恩恵を受け、また女性の協力なしには持続的な水道開発が難しいともいえます。特に地方農村部は小規模の水道施設をコミュニティで管理する場合が多く、維持管理から利用まで女性がすべてにかかわる場合も多くみられます。農村給水プロジェクトはそのままWIDプロジェクトとしても位 置づけられています。
(1)都市の水道整備
 都市の水道整備は一般的にインフラストラクチャー整備の一つととらえられ、女性とは直接関係ないようにみられますが、WIDの重要な目的として、あらゆるプロジェクトを女性の視点でとらえるということを考慮すると女性とのかかわりが見えてきます。水を利用するのは女性であり、水道が整備されて恩恵を受けるのはまず女性です。水の使用量 、頻度、時間、使用目的、どういった施設が使いやすいか、水道料金の支払い能力があるかどうかなどの水道プロジェクト計画に欠かせない基本調査項目については十分女性の意見、経験に耳を傾けなければならないことがわかります。

(2)農村部の水道整備
 農村部の浅井戸、湧水利用といった小規模の水道施設は、さらに女性とのかかわりが大きくなります。水道がないとき、水を遠い水源から運んでくるのは、ほとんどの地域では女性の仕事です。次に水利用も上記で述べたように女性の役割であり、施設の維持管理、集金にいたるまで女性がかかわる場合も多くあります。 現在、農村給水プロジェクトは、次のような給水整備と衛生教育、WIDが一体となった「住民参加型」方式がとられるようになってきています。
 1)プロジェクト前段には住民のプロジェクト実施の意思確認をし、水道委員会の結成、グループ別 保健衛生教育(女性の参加)や水道の技術・維持管理の研修を行う。
 2)水道施設の計画と建設にあたっては住民の労働力やローカル資材の提供といった協力をする。
 3)施設建設後には住民による維持管理、料金徴収、簡単な修理を女性などの参加によって行う(政府機関や援助機関による定期的巡回助言や大きな故障時の修理支援などが必要)。同時に子供、母親などへの衛生教育の継続がなされる。
(3)水道プロジェクトの女性への大きな被益効果
 このような農村部の住民参加型プロジェクトにおいて、特に水道整備における女性の参加は非常に重要です。安全な水を身近に得ることで、女性は水汲み労働から解放され、衛生的な生活に目を向けることができ、家族への衛生面 の配慮、生産活動への参加、社会の参加とつながっていくことができます。地域の生活習慣を十分考慮しつつ、水道プロジェクトのなかに女性の参加を積極的に促すことが重要です。

2.WID配慮の手引き
 JICAは「WID配慮の手引書」をつくり、分野別にWID配慮の方法と事例を示し、各プロジェクトのなかにWIDの視点が確保されることをねらっています。
(1)JICAにおいては、プロジェクトサイクルの各段階に応じて以下のようなWID配慮の5要件を決めています。
 1)住民男女の現状分析(案件計画段階・評価段階)。
 2)女性からの意見聴取(案件計画段階)。
 3)女性の参加を促進する方策(案件計画段階・実施段階)。
 4)女性の参加(案件実施段階)。
 5)WID専門家の活用(案件計画・実施・評価段階)。
(2)WID配慮を促進し、WID配慮5要件の実施状況を確認するためのチェックリストは次のようになっており、担当者が使用することとしています。チェック内容は上記のWID配慮5要素ごとに以下の5項目となっています。
 1)WID配慮の具体的チェック項目。
 2)実施状況。
 3)実施内容。
 4)報告書への記載。
 5)配慮を実施しないとすればその理由。
(3)給水施設整備におけるWID配慮のための視点は次のように示されています。
 1)生活用水の調達法についての現状把握(誰が、どのような手段で、どのような水源を)。
 2)水の調達に関する問題と要望(特に水汲み従事者、女性の意見を聞く)。
 3)施設の設計・建設計画への参加。
 4)施設建設への女性の参加促進。
 5)施設の維持管理・運営に関する研修の女性の参加促進(女性が参加しやすい日時、場所)。
 6)施設運営の女性の参画(運営委員会、水組合など)。
 7)住民への衛生教育の実施(女性・学校教育)。

【出 典】
1)WID配慮の手引書,国際協力事業団,p10,p15,p68−69,1993.

(山本 敬子)

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