3.3 水道とWID
Q76 水道分野におけるWID配慮を具体例で説明してください
Key words:開発調査にみるWID配慮、有償資金協力にみるWID配慮、無償資金協力にみるWID配慮
1.開発調査にみるWID配慮の具体例(1994年度)
(1)ボリビア「地方地下水開発計画」(1994年10月〜1996年3月)
1)調査概要
5県の地方の水道整備のためのデータベース作成、地下水開発マスタープランの作成と4カ所のパイロットプロジェクトの実施からなっています。
2)WID配慮の例
パイロットプロジェクトは、試験ボーリングを行って水源開発可能性を探るとともに、そのボーリングを利用し、住民参加のもとに井戸施設、水道施設を建設し、同時に給水施設の維持管理教育および衛生教育の実験を行い、そのデータを地方水道整備計画の参考にする目的でした。パイロットプロジェクト地域は、ボリビアのなかで地形・気候の異なる地域が選ばれており、地域特性に見合った開発戦略の模索でもありました。
@プロジェクト前の水源
ため池の水、雨水、河川、容量不足の給水施設(女性の重労働、不衛生な生活)。
A給水内容
人口110〜1200人、井戸深さ100〜250m、供給量0.55〜6.0m3/h。
B施設内容
貯水タンク、揚水ポンプ、共同水栓。
C事前活動
a.給水委員会の組織化、給水委員会の任務の決定(建設時の土木作業、施設の運営・維持管理)。
b.水使用者の財政分担義務についての説明。
D維持管理教育
維持管理の成否が地方給水システムの持続性を決定づけることから、水利用者に対する教育を重視しました(スライド、パンフレットによる説明。施設運転は機器を実際に使っての指導)。
E衛生教育
a.汚染した水の使用が健康に危害を与えること。
b.衛生的習慣を身につけること。
c.水道サービスの持続のために料金を支払う重要性。
以上の行為が生活向上につながることを説明しました。実施方法は次のとおりです。
社会・経済調査→給水委員会のもとに健康・衛生グループを設置→衛生教育戦略の策定(女性の参加など)→教材の開発(ビデオ、パンフレット、ポスター、葉書など)→衛生教育のための集会開催→教育の継続。
F住民による自立した水道施設運営へ定期的モニタリング。
G女性に関する提案
a.衛生教育、施設維持管理教育には、水道整備で時間のできた女性を積極的に参加させること。
b.給水委員会のメンバーに女性を加えること。
2.無償資金協力、有償資金協力にみるWID配慮の例
無償、有償資金協力の水道整備がそれまでの女性の水汲みの重労働を軽減させ、直接的に女性がプロジェクトの被益者となっていることを成果 としています。
(1)無償資金協力の例(1994年度)
1)カラソ台地地下水開発計画(ニカラグア)
2)ムチンジ地下水開発計画(マラウイ)
3)地方給水施設整備計画(セネガル)
4)ギニアウォーム対策村落給水計画(マリ)
5)ピナツボ火山被災民生活用水供給計画(フィリピン)
(2)有償資金協力の例(1994年度)
1)レコンキスタ川流域衛生環境計画(アルゼンチン)
2)カラチ上水道改善計画(パキスタン)
3)上水道セクター整備計画(モロッコ)
【参考文献】
1)外務省経済協力局編:我が国の政府開発援助(ODA白書 上巻),国際協力推進協会,1995.
2)ボリヴィア共和国地方地下水開発計画調査最終報告書.
(山本 敬子)