3.4 住民参加型の援助


Q78
住民参加型の援助を行う際に考慮すべきコミュニティの特徴は何ですか





  Key words:住民参加、コミュニティ意識

1.農村か都市部か
 開発計画では対象地区を都市と農村に分けて論じることが一般的です。住民参加は農村と都市部とではその形態も当然異なります。農村では農繁期と農閑期とがあり、農閑期には多数の住民の参加や労働奉仕を得ることが可能です。一方、都市部ではこのような季節的な違いはありません。都市部では住民のボランティアとしての協力を得るよりも失業対策として住民を公共事業に雇うことを考慮したほうがよいでしょう。人口規模によって都市部か農村かの区別 がつかない場合は農業従事者の割合で住民参加の形態が決まると思えばよいでしょう。
 コミュニティ意識は住民の間の精神的な結びつきですから、島嶼部や他から隔絶した場所で強く、都市部では一般 的に希薄です。人口500〜600人以下で人の移動が少ないコミュニティでは住民同士がお互い知り合いになっているはずですが、それ以上の規模の場合は村のリーダー格の人が個々の住民を知らない場合があります。小さいコミュニティほど住民の協力が得やすいはずです。

2.都市部のコミュニティ
 都市部でも古くからの既成市街地であったり、特定の民族の居住地区などではコミュニティ内での団結がみられますが、これにあてはまらない住民は、都市を単に居住するだけの場所と考えており、コミュニティの組織化はあまり期待できません。一方、都市部の不法居住地区やスラム地区では安全な水の供給へのニーズがきわめて高いため、住民が団結して協力することが期待されます。しかし、特にこうした地区が短期間の間に形成されたような場合にはそうでもないようです。
 都市部の貧困層の協力を得ようとする場合は、その救済のために労働に対して賃金または食料を対価として与えることが望ましく、ボランティアとしての活動を期待すると生活の余裕のある層だけしか参加できず、かえって貧困層を疎外してしまう結果 になります。

3.複雑なコミュニティ内のグループ
 コミュニティに複数の民族やカーストが存在すると、実質的に複数のコミュニティがあるのと同じです。コミュニティが均一である場合はまだしも、地主と小作人、大地主と零細地主などが共存すると事態は複雑です。こうした場所で援助プロジェクトを行うとき、外部から来てすぐ指導者層と付き合っていると、こうした差に気づかず、村が平等であるかのように誤解をする場合があります。住民参加を手がける専門家はコミュニティにどういうグループが存在するのかを注意深く調査する必要があります。
 コミュニティ内には指導者層のほかに貧困層、女性、少数民族、低いカーストなどさまざまな弱者グループが存在します。コミュニティの各グループを平等に扱うためには、すべてのグループから民主的にそれぞれの代表を選ぶ必要があります。たとえ平等に選ばれたとしても多数を占める弱者のグループが有力者層の圧力を恐れて積極的に参加できない場合があります。外部援助プロジェクトの場合、少数の富裕層がかえって恩恵を受け、不平等がさらに広がることがよくあります。援助プロジェクトではプロジェクトをまったくコミュニティの手に委ねるようなことはせず、少数派の住民も恩恵を受けられるように援助機関のほうでコントロールする必要があります。

【参考文献】
1)IRC International Reference Centre:Technical Paper Series 17:Community Participation in Water and Sanitation:Concepts, Strategies and Methods, Hague, 1981.

(北脇 秀敏)

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