3.6 水道整備と環境配慮


Q83
浄水場からの汚泥・排水には環境配慮のうえからどう対処すべきですか





  Key words:環境配慮、浄水場、ろ過池

〈汚泥・排水への環境配慮〉
 浄水場の沈澱汚泥、ろ過池の洗浄排水は、最近まで確かに浄水場に近い河川に放流していました。ミシシッピー河のような大河川に放流する(シカゴ南部浄水場)ならば河川そのものにまったく影響ないですが、雨期・乾期の2期の国では、乾期の流水の少ない時期には下流に大きな影響を及ぼすことになります。つまり河川水の利用は、灌漑用、部落民の水浴・食器洗浄・洗濯用などですが、沈澱池からの排泥、ろ過池の洗浄排水の河川への直接放流は生活環境への影響が明らかとなります。
 途上国では、コスト高、維持管理の煩雑さから機械設備によらない水流方式による凝集と横流式沈澱池が採用され、人力による排泥が広く採用されています。沈澱池は乾期の原水濁度が低い時期に沈澱池を空にして掃除します。多くは汚泥池をつくって1池分の凝集池・沈澱池からの排水を入れて上澄水を排水(ケニアのナクル地区水道の場合は家畜の飲料に利用)し、またろ過池洗浄排水は排水池に入れて上澄水を排水するか、あるいは原水着水井に戻しています。最近の計画では浄水場から排水を直接河川へ放流することによる影響を避けるために、汚泥池・排水池を設置しています。ケニアのナクル地区のトラシャ浄水場(日量 18000m3)、モーリシャスのポートルイス市のパイ浄水場(日量40000m3)は汚泥池・排水池を設置しましたが、原水がいずれも自然流下で流入することと乾期の低濁度への混ぜ合わせを避けて、ろ過池洗浄排水上澄水の着水井返送は行っていません。上澄水を排水し終わった沈澱汚泥は乾燥させて埋立処分します。
 ヨルダンのアンマン市のザイ浄水場(日量12万3000m3)では米国の無償援助によったためと思われますが、沈澱池は横流式、移動式ポンプ排泥、天日乾燥床による乾燥、ろ過池洗浄排水は排水井に集めて着水井に返送する設備となっています。現実には汚泥乾燥ケーキを浄水場に近い場所に処分しているようですが、処分先の環境を調査のうえ、埋立処分方法を決めなければならないでしょう。

(大山 藤夫)

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