3.7 水道とエネルギー


Q85
漏水防止について、水道システムのランニングエネルギー節約の視点から説明してください





  Key words:漏水防止、ランニングエネルギー、水圧管理

1.わが国の漏水防止対策
 漏水を防止することによって、水道システムとして管理すべき必要水量を総体的に減少させることができるため、ダム建設などなどの水源開発、浄水場、給水所、ポンプ所、送配水管などの建設費および維持管理費が軽減できるとともに、導・送・配水ポンプ、薬品処理および排水処理などにかかるランニングエネルギーが節約できます。
 わが国では、国の行政施策として、有効率の目標値を95%程度に設定し、水道の漏水防止対策の強化に努めています。
 1996年度における日本の上水道事業の総給水量は170.6億m3、有効率は90.9%、ポンプ運転などにかかわるランニングエネルギーとしては上水道と水道用水供給事業の合計電力使用量 が約78.9億kWhでした。
 有効率を4%上昇させて95%とすることができれば、総給水量は163.2億m3に抑えることができ、7.4億m3減らすことが可能となります。また、これに伴い、必要な電力使用量 は3.3億kWhの節約が想定され、さらに塩素剤、凝集剤、中和剤などの薬品使用量 および排水処理量が減量できます。
 東京都における1994年度の年間給水量は17億4600万m3、有効率は89.7%、漏水率は9.6%であり、年間漏水量 は約1億6800万m3でした。また、電力使用量は7.71億kWhでした。
 漏水防止対策の積極的な推進により、有効率を95%に到達させるためには、1994年度の年間給水量 を基準として考えた場合、漏水率で約5%、年間漏水量で約8700万m3減少させることが必要です。この量 は東京都の水道需要量の約80%をまかなっている利根川水系で3番目に大きな奈良俣ダムの有効貯水量 (8500万m3)に匹敵する膨大な量です。また、この漏水の防止が実施できれば、電力使用量 で0.39億kWh(7.71億kWh×0.05)の減量が想定されるなど、ランニングエネルギーが節約できます。
 現在、東京都が進めている漏水防止対策には、漏水箇所を調査発見し修理する即応的対策と、老朽化した配水管や給水管を、強度に優れ漏水の少ないダクタイル管やステンレス鋼管などに取り替える予防的対策があります。さらに、水圧の細かな管理も有効であり、配水圧力の適正化に努めています。

2.配水圧力の適正管理によって漏水を減量させた場合のランニングエネルギーの節約
 一般に使用されている水圧と漏水量の関係式は、漏水孔からの漏水量を一種のオリフィスと考え、次の式で表されます。
   Q=C×A×P^(0.5)
     Q:漏水量
     C:漏水孔の形状による係数
     A:漏水孔の断面積
     P:管内圧力
     ^:累乗
 漏水量は水圧の1/2乗に比例することになり、水圧が高くなれば漏水量が増えるため、水圧の細かな管理が重要です。
 ある水道事業体において、現状の平均水圧が3.5kgf/・であると仮定し、それを0.5kgf/・減少させ3.0kgf/・とした場合、漏水量 を7.4%減らすことができます。
 (1−√(3.0/3.5)=1−0.926=0.074)
 仮に、この水道の日平均給水量を50万m3、漏水率を10%とした場合、年間漏水量 は1825万m3となりますが、水圧を0.5kgf/・低下させることによって、年間漏水量 を135万m3減らすことができ、ポンプ運転に要する電力使用や浄水処理時の薬品使用、排水処理などのランニングエネルギーも0.7%程度の節約が予測されます。
 また、水圧管理に有効な手段と考えられるのは配水ブロックシステムです。これは、水圧の均等化をめざした配水管網の組織形態の一つであり、地盤の高さの均一な地域を一つのブロックとしてまとめて水圧管理するものです。

【参考文献】
1)日本水道協会編:水道統計.
2)東京都水道局経営計画部資料.

(柳沢 武光,小林 成行)

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