3.7 水道とエネルギー


Q87
途上国におけるポンプ動力源として、ソーラー発電を採用するための条件を説明してください





  Key words:ソーラー発電、太陽電池

1.ソーラー発電採用の目的
 途上国におけるソーラー発電は、主として商用電源の確保が困難な地域に、独立したオンサイトの電源を確保するために導入されるものです。

2.ソーラー発電の原理による分類
 ソーラー発電の原理による分類は一般的に次のとおりです。
(1)単結晶Si太陽電池
 製造コストは高いが、発電効率も約20%と最も優れています。
(2)多結晶Si太陽電池
 小さな単結晶が集まった多結晶のSiからなるもので製造工程を工夫してコストの低減を図った結果 誕生しました。発電効率は約15%程度です。
(3)非結晶Si太陽電池(アモルファス)
 製造コストは最も安いが発電効率は10%程度です。

3.商用電源の代わりに使われるソーラー発電
 商用電源の代わりになるような大きなパワーを必要とする場合は、一般的に最も発電効率の高い単結晶Si太陽電池が使われます。Si太陽電池のセル単体の発電電圧は約0.6Vと小さく、電流もまた小さいので、必要とする電圧と電流を得るためにセルを集めてモジュールを構成し、モジュールを集めてアレイを構成していきます。

4.ソーラー発電システムの特徴
 ソーラー発電の特徴は、太陽の日射量によりその発電量が上下に大きく変動することです。当然夜間の発電量 はゼロになります。また、太陽電池は半導体なので、温度によっても大きく発電効率が変動します。たとえば日射量 の多い夏期は、セルの温度もまた高くなるので発電効率は低下します。
 太陽電池は当然、発生電力は直流ですが、一般には直流を交流に変換するインバーターを付加して、交流電源として使えるようにするのが普通 です(図1)。ただし、直流の電動機のほうが手に入りやすい地域では、インバーターは不要となります。なお、ソーラー本体のメンテナンスはほとんど必要としません。

5.独立したオンサイト電源
 商用電源が引かれていないような地域で、独立したポンプ駆動用のオンサイト電源として太陽電池を機能させるシステムを次に示します。
(1)太陽電池+蓄電池
 昼間は太陽電池で蓄電池に充電しながら、必要に応じてポンプ駆動も行い、太陽日射量 の少ない日や夜間は蓄電池からポンプ駆動用電力を供給します。蓄電池は寿命が比較的短いので、そのリプレースが困難な地域では次の(2)の方式を用います。
(2)太陽電池+大容量の貯水槽
 太陽日射量の多い時にポンプを駆動して水槽に貯水しておくもので、1日の使用量 程度の水槽と、それを可能にする太陽電池容量、ポンプ容量があればまず、水供給に支障は生じないものと思われます。ただし、日射量 の少ない日が続くようなことがままある地域では、水槽の容量を大きくすることが必要になります。
(3)太陽電池+大容量の貯水槽+蓄電池
 上記(1)(2)のハイブリッドタイプで、最も安定した水の供給が可能となります。

(関根 勇二)

図1

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