3.7 水道とエネルギー


Q88
途上国におけるポンプ動力源として、ソーラー発電を採用するための条件を説明してください





  Key words:井戸、風車揚水

1.井戸への風車揚水の利用
 風車による動力利用は、動力源としての電力の確保が困難な場合に使われるのが一般 的です。しかし、どこでも風車の利用が可能というわけではありません。風力エネルギーは、エネルギー密度が低く、かつ、風速、風向が時間、場所によって大きく変動し、それが持続しないという共通 の性質をもっているからです。また、非枯渇性のクリーンなエネルギーでもありますから、近年は環境問題やエネルギー問題への関心の高まりを反映して、主に発電動力として注目されています。
 したがって、風力の利用は、年間を通して比較的風が強い(平均風速2〜6m/s程度以上)という、地理的特性を生かした動力エネルギー確保策として有効となります。また、人家の近くでは、騒音が問題になる場合があるので注意が必要です。

2.風車揚水の分類
 風車により揚水する場合、次の2通りの方法があります。
(1)風車により発電をして、その電力でポンプを駆動する場合。
(2)風車により機械的にじかにポンプを駆動して揚水する場合。
 ここでは(2)の場合について述べます。

3.風車の選択
 風車には水平軸形、垂直軸形の別、そして用途、対象とする風速などによりさまざまな種類があります。
(1)水平軸風車
 1)オランダ形:出力20〜50kWで、主に排水に用いられている。
 2)多翼形:農業用の揚水に用いられ、1 kW以下のものが多い。
 3)プロペラ形:2〜3枚のプロペラ翼をもち小型から大型まで使用範囲が広い。主に風力発電に用いられている。
(2)垂直軸風車
 1)サポニウス形:筒型ローターの構造をもち、低速回転型であるがトルクが大きいので、起動のための装置が不要。
 2)ダリウス形:細長い弓状の翼を垂直軸のまわりに取り付けたもので、トルクは低いが高い回転速度が得られる。
 3)ジャイロミル形:ダリウス形の変形で、効率が高い。
 これらの風車のなかで、規模の小さい直接揚水としては、トルクが大きく複雑な起動機構を必要としない多翼形およびサポニウス形風車が使われる例が多いようです。風車を揚水に直接利用する場合は、風車の回転速度が変化しても揚水量 が上下するだけです。
 bicycle wheel形多翼風車とサポニウス形風車を図1に示します。

4.風車の制御機構と維持管理                     
 水平軸形の場合は風向追尾の機構が必要となります。小型風車の場合は尾翼を付けるのが一般 的です。
 小型風車が揚水を開始する風速をカットイン風速と呼び、おおむね2m程度です。また、風車を保護するため運転を停止する風速をカットアウト風速といい、15〜20m以上に設定されています。カットアウト風速に達したときは、自動あるいは主導で確実に保護機構の操作ができることが求められます。
 なお、通常は注油・グリスアップ程度の管理が中心となります。

【出 典】
1)エネルギー変換工学:8.3風力エネルギー,p202,203.

(関根 勇二)

図1

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