4.1 水道事業の経営と財務


Q89
水道事業の経営状況を判断するのに必要な基本的資料を示してください





  Key words:水道事業の経営状況

 水道事業は、良質の水を豊富かつ安定して安価で供給することがその目的であり、経営状況の良否は、水質、水量 、料金ないし財政状況の3つの角度から評価されることになります。
 供給される水道水の水質については、多くの国々では水質基準を設定しており(設定していないところでは、その設定が要求される)、供給されている水が水質基準に適合しているかどうかで、良質の水かどうかが判断できますが、詳しくは「5.3 水質(Q142〜Q151)」に譲ることとします。水道水の使用者にとって最も重要なことは、いつでも良質の水が十分に供給されることですので、水道事業者としては、水の需要に見合った水源の確保、浄水・配水施設の完備が前提となります。そのためには水道財政が健全でなければならず、適正な原価をまかなう料金収入の確保がどうしても必要となり、出水不良や断水を生じさせないことが重要なこととなります。水量 の確保、料金ないし財政状況の適否を判断するのに必要な基本的資料を示すと次のようになります。

1.水道の基礎資料
(1)給水区域内人口
(2)給水人口
(3)普及率
(4)配水能力
(5)1日最大配水量
(6)1日平均配水量
(7)年間総配水量
(8)年間総有収水量
(9)総水戸数(給水栓数)
(10)職員数
(11)水源(水利権)
 経営状況をより正確に判断するには、以上の資料が正確であることは当然として、3〜5年間ものが入手できれば趨勢が把握でき、またその水量 が浄水場別、日別および月別に入手できれば施設利用率などが浄水場別、月別 に把握できるし、職員数も職種別、事業所別などに分類されていればいるほど望ましいといえます。

2.料金・財務関係資料など
(1)水道料金表
(2)現金収支会計をとっている場合の財務関係資料
 1)収支計算書(予算または計画、決算)
 2)財産目録(次に掲げる項目の内容が具体的に表示されているもの)
   @現金・預金・有価証券
   A土地、各種施設、機械、重要機器
   B借入金
(3)企業会計をとっているときの財務関係資料
 1)損益計算書(予算または計画、決算)
 2)貸借対照表
 3)各種の明細書
   @固定資産関係
   A借入金関係
   B収益費用関係

(4)財政計画書
 1)料金改定時の財政計画書
 2)施設整備計画策定時の財政計画書
(5)施設整備計画書
 1)拡張計画書
 2)整備計画書
(6)国・一般会計との負担関係の規定
 1)国の補助、負担の制度(建設・運営)
 2)一般会計の補助、負担の制度(建設・運営)
 水道料金表は、日本では3〜5年ごとに改定されることが多いのですが、国によってはインフレーションの急激な進行などにより年々改定されることもあり、過去数年間の料金を確認する必要があります。財務関係の基本的資料である財務関係資料は、採用している会計制度によって異なるため上記のように区分して示しました。財務関係資料は毎年作成されるものであり、収支計算書、損益計算書、貸借対照表は過去3年分を入手できればよいと考えます。財政計画書は、通 常水道料金の改定時や水道施設の拡張や計画的な整備を策定するときに作成されるものですが、今後数年間の金額的予測が行われているため、これによって現在欠けている課題が明確になるうえ、経営収支の今後の推移が予測されます。施設整備計画書のうち拡張計画書は将来の水需要予測に基づくものであり、整備計画書は現在の施設の問題点を克服するためのものです。
 以上にあげた資料は最低必要限度のものであり、より正確に経営状況を判断するためにはさらに詳細な資料のあることが望ましいのは当然のことです。

(宮田 要)

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