4.1 水道事業の経営と財務


Q91
水道事業の経営状況を判断するのに必要な基本的資料が得られない場合、どうすればよいでしょうか





  Key words:水道事業の経営状況

1.最低限これさえあれば全体を類推できる資料は何か
 開発途上国では十分な経営管理組織ができていないこと、情報管理が厳しすぎることなどがあって基本的な資料でも入手しがたいことがあります。経営管理組織が不十分なため基本的資料が作成されていない場合は、現在作成されているものを提出してもらい、その内容を検討して資料の不足分を補うしか仕方がありません。しかし情報管理が厳しいことにより必要資料が得られない場合はさらに困難であり、相手国に対し必要性を説得しなければなりません。
 経営状況を判断するのに最低限必要な資料としては、次のようなものがあげられます。
(1)年間総配水量
(2)水道料金表
(3)財務関係資料のうち前年の収支計算書または損益計算書・貸借対照表
(4)国・一般会計との負担関係の規定
 水道事業を経営していれば、経営管理組織がどうであれ、上記にあげたようなものを作成しなければ事業の運営ができません。特に財務関係資料はその内容に相当の差があっても、何らかのものが作成されているはずであり、これの提出を拒むということは、すなわち資料提供についてまったく協力しないという意思の現れということになります。
 ただ厳しく資料の提出を要請しても、場合によっては正当書類の科目、金額などを一部修正して提出されることもありうることで、このような場合は疑問のある科目や金額については、関係者に質問して確認するしか方法は見当たりません。たとえば、収支計算書に減価償却費が計上されているものがありましたが、減価償却費は支出ではなく、もしこれに関連した支出があったとすれば、科目の表示の仕方に問題があったことになります。

2.資料が入手できず、ヒアリングだけで類推できるか
 資料が入手できず、ヒアリングだけで経営状況を類推することは非常に困難なことであり、一口で言ってしまえば不可能であるということになります。上記で述べたとおり、水道事業を経営していれば、少なくともこの程度の資料は不可欠であり、それが入手できないということは、ヒアリングでも聴取できないのではないかと思われます。しかし調査の担当者としては、自ら可能な限りの努力をするとすれば、次のような点について関係者または使用者にヒアリングしてはどうかと思います。
(1)使用者の水道料金はどうして計算しますか
(2)物を買うときの手続きはどうしますか
(3)現金、預金などはどこに保管していますか
(4)国などの補助、負担の制度はどうなっていますか
 当然作成すべき資料が提出されず、これを調査団のほうで類推して作成したとしても、これをもっていろいろの判断の資料として使用することは危険であり、その資料を相手国に了解させてからでなければ使用できないと考えるべきです。 


(宮田 要)

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