4.1 水道事業の経営と財務


Q92
最貧国の財政破綻した水道事業、あるいは政府からの補助金を受けている水道事業の、経営・財務面 の問題点を明らかにする方法を説明してください





  Key words:財政破綻、政府からの補助金

1.「最貧国」に対して
 最貧国とは、1人あたりの国民所得がきわめて小さい国として考えると、そのような国では水道料金が適正原価をまかなえないような低い水準に決められることが多いと想像され、この結果 、水道事業財政の収支が均衡せず財政破綻をきたすことになります。このような国に対して水道施設の建設を資金援助しても、その後の事業運営で施設の維持管理を十分に行うことができず、極端な場合は運転が休止してしまうことになります。以上のことから次のような点について留意すべきものと考えます。
(1)水道財政の現状の把握。
(2)水道財政の水準は適正か〔収支計画の有無、国民所得(可処分所得)に占る割合から判断〕。
(3)給水サービスは十分か(断水、出水不良の有無と料金徴収率に留意すること)。
(4)水道施設がすべて稼働しているか(休止しているときは、その原因が何かを確認する。資金不足のほか、技術者の不足、資材の調達不能などが考えられる)。
(5)政府からの補助制度の有無およびその予定額と実績額との比較。
 以上のような項目を調査しその内容が確認できれば、経営・財務面の問題点が明確になっていくと思われますが、一方その国の特別 な事情(自然条件、社会的条件、政治的条件)も考慮に入れる必要があるでしょう。

2.政府からの補助金を受けている水道事業に対して
 また政府から補助金を受け入れている水道事業については、その受入れについて法律などで制度化されているものと、当該水道事業のみについてその状況により臨時的に補助を行っているものとに大別 できます。補助を実施している目的は、主に水道料金の水準を低く抑えるためや水道事業間の格差是正などのためであり、その額は政府が水道事業に対し一定の範囲について計算基準を定めて補助金を支出することが多いようです。ただ後者の臨時的な補助は、特別 の事情とその計算基準について内容の把握を行うべきですが、その事情が災害、事故など異常な状況の発生に対処するものであれば妥当な補助といえますが、経常的なものに対する補助であれば前者の範囲に入れるべきものです。以上のことから次のような点に留意すべきものと考えます。
(1)制度化されている補助制度の確認。
(2)制度どおり補助が実施されているか(補助申請額とその承認額の比較など)。
(3)補助制度の内容の妥当性(水質、水源、水道料金、水道財政からみての妥当性)。
(4)水道料金の決定権限はどこか。
(5)資金調達の権限はどこか。
(6)補助制度が完備しているのに財政破綻が生じている場合は、上述の1.について留意すべきである。

(宮田 要、岡賀敏文)

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