4.1 水道事業の経営と財務


Q93
途上国では施設・設備の修理・更新がされず劣化するままになる場合が多いですが、なぜですか





  Key words:水道施設・設備の修理・更新

〈施設、設備が修理・更新されない理由〉
 途上国の水道事業で水道施設や設備の修理が行われず、それが原因で施設や設備そのものが使用不可能になってしまうことが多くみられます。この原因については、各国の状況により種々のものが考えられますが、一般 的なものを列挙してみると次のようなものがあります。
(1)資金不足
 人件費、動力費、支払利息などの費用は管理不能費といわれ、短期的にみれば、事業者の裁量 の範囲を超え、一定額は必ず支出しなければならない費用ですが、修繕費は施設や設備の劣化消耗が目に見えなく、その支出の判断は事業者の裁量 に任されています。したがって財政収支が厳しいときは、修繕費を削減して収支を均衡させることが多く、その結果 、施設や設備の修繕の時期を失し、場合によっては修復が不可能で結局巨額を投じてこれを更新しなければならなくなります。
(2)資材不足
 資金があり、事業者が修繕をする意思があっても、修理に必要な部品や機械器具がないため、修理ができないことがあります。
(3)技術者の不在、不足
 水道設備や設備の構造に精通した技術者がいないか、いても少ないため、故障の原因が把握できず、修繕が実施できないことがあります。わが国では、専門の業者にこれらを委託することもできますが、途上国ではその面 でも困難です。
(4)基礎資料の不備
 水道施設や設備が故障などにより修繕が必要になるのは、これらを取得してから少なくても数年を経過してからになります。しかし設置当初の基礎資料の保存が不十分で現状を把握しがたいことが多く、このため修繕ができないことがあります。特に配水管の修繕(敷設替えなどを行おうとする場合に)は配水管網図がなければ、その位 置の確認に非常に時間と費用がかかることになります。
(5)水道料金が定額制
 水道施設のうち、通常メーター内の漏水は水使用者の水道料金に影響するため使用者が積極的に修繕することになりますが、定額制の場合は水道料金に影響しないためこれを放置すると思われ、有収率を引き下げることになっています。
(6)水道料金がきわめて安い場合
 途上国では、国民所得が低いこともあって水道料金をきわめて安くしている国があります。料金が安すぎると水道財政の収支が悪化し、これが修繕を遅らせることになります。また上記の定額制と同じ意味合いで、漏水に対するむだの意識が薄くなっています。

(宮田 要、岡賀敏文)

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