4.1 水道事業の経営と財務


Q94
無償資金協力案件によるプロジェクトの建設段階で相手国側負担分を担保する方法はありますか





  Key words:無償資金協力、相手国側負担分、カウンターパートファンド、基本設計調査

1.相手国側負担分の設定
 無償資金による外国援助のプロジェクトで、税金、土地収用費用、プロジェクト運営のための一般 管理費などの融資非適格項目、その他援助資金でカバーされない部分については受入国側が独自に資金の手当てをしなれければなりません。これは援助資金に対するカウンターパートファンドと呼ばれることもありますが、しばしばその供給が滞ることによりプロジェクトの進捗が妨げられることがあるのが実情です。無償資金協力ではプロジェクトの進捗に応じたスムーズな供給に対する相手国政府およびプロジェクト実施機関のコミットメントを取得するために次のような手段を講じています。
(1)相手国側の負担内容はJICA事前調査団が基本事項(たとえば租税、公課など)を協議し取りまとめ、相手国政府からの便宜供与として最終的に両国政府間で交わされる交換公文に反映される。
(2)案件の詳細内容は基本設計調査団が協議し双方の合意事項を議事録として記録する。詳細内容は相手国の負担の許容範囲と施設の設計、建設内容を考慮して、負担項目が設定される。
 また、基本設計調査時にカウンターパートファンドに関して次のことを十分に確認することが重要です。
(1)設定された相手国側の負担分について、プロジェクトの進捗に応じた年次必要支出額を相手国側と調査団が作成し、基本設計調査のなかで負担と支出のスケジュールを作成すべきである。
(2)当該プロジェクトの負担金の負担者(政府か実施機関か)、負担方法(負担者が政府の場合、補助金か出資か、またはローンか)について、キャッシュフローの将来見込みを作成し、負担年度を示すべきである。
(3)(2)は(1)に対してフィージブルか。
(4)カウンターパートファンド支出のための手続きとその妥当性。
 プロジェクト開始後に相手国側負担分の手当てが滞る主な原因としては、相手国側が必要資金の用意を怠っている場合と、資金はあるが支出手続きの実行がスムーズに行われないように、支出のタイミングが遅れる場合とをあげることができます。このような結果 を避けるために、基本設計調査時点で負担と支出のスケジュールとキャッシュフローを調査団が協力し相手国側主導で作成させるよう心がけることが重要であり、あくまで相手国側の自主性を促す努力をすべきです。

2.負担分の資金担保について
 相手国側の負担内容の資金を担保することは原則的にできません。質問の主旨に該当するケースとして次の2つが考えられます。
(1)日本側が負担分を工期どおり完了したにもかかわらず、日本側負担分に直接関係ない部分で相手国側が負担内容を履行しない場合(例としては日本側負担分への電力供給や配水管の敷設などがある)
(2)日本側工事の先行工事である相手国側負担工事が遅れ、それによって日本側工事が指定工期に間に合わなくなった場合(例として土地収用、水利権の未解決や水源としての井戸掘削工事の遅れがある)
 (1)の場合、日本側としてはプロジェクトは完了しているわけですが、上記いずれの場合でも全体計画として完結せず、計画工期までに施設の機能が当初計画どおり発揮しないことになります。とはいえ、上述した例での事務的な解決策としては次の方法があります。
 (1)の場合、日本側は相手国に対して繰り返し履行することを求めますが、強制する手段はありません。
 (2)の場合、工期内完成ができない部分の契約変更、または、状況によっては契約全体の契約解除を行い清算金を日本政府に返納する方法があります。すべての契約が解約された例として、当該国の内戦やクーデターなどの原因で解約された以外これらの先例はあまりないようです。
 上述したように相手国側負担分の設定については基本設計時での相手国側の参画を求め、自覚と責任を促すかたちの調査が必要であるといえます。

(岡賀 敏文)

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