4.1 水道事業の経営と財務


Q95
無償資金協力でプロジェクト完成後、相手国が適正運営をすることを担保するためにはどうすればよいのですか





  Key words:無償資金協力、マネジメント能力、運営能力

〈無償資金協力案件での担保〉
 無償資金協力のプロジェクト完成後に当該施設・設備の運営機関である事業体が適正な運営を行って、期待されたプロジェクト効果 を発揮できるか否かは、ひとえに当該事業体のマネジメントおよび運営能力の有無にかかっています。
 無償資金協力は、一般的に長期的視野に立った全体計画(マスタープラン)や、技術や運営面 の妥当性調査(フィージビリティスタディ)が終了して最優先プロジェクトとしての位 置づけが確定された案件が多いものです。つまり、特定のプロジェクトが技術的に実施可能である、財務的にペイするものである、また途上国に対する経済協力案件の場合にはそれが国家の経済・社会にベネフィットをもたらすものであるとの認識でスタートします。
 そして、無償資金協力案件は事前調査でのプロジェクトの妥当性の確認と問題点の把握から始まります。事業体の運営に関する項目も当然調査の重要項目の一つです。次に実施される基本設計調査ではプロジェクトが完成した後にそれが期待どおりの財務的、経済的、社会的効果 の発現を達成できるかといった観点から、事業体のマネジメント能力と運営能力の評価を行い、弱点が発見された場合にはそれを是正するための提言を基本設計調査報告書のなかに取りまとめます。
 提言された内容は基本設計調査において調査団と相手国実施機関との間で取り交わされる議事録のなかに織り込まれて、実施を促すわけです。この議事録は互いに公文書扱いとなり、担保にあたるものと考えられます。実施段階以降については、提言の実施を拘束する確実な担保はありません。無償資金協力での提言は、あまり厳しい内容にしても実施に移されないおそれがあるので、受入れ可能な内容にすべきこと、財務面 、運営面では調査団による一方的なものではなく、相手国側の参画を求め、自覚と責任を促すかたちで作成することが重要であると考えます。
 このように、以前は無視ないしは軽視されることの多かったマネジメントや制度・組織面 の評価が最近重視されるようになってきたのは上述の内容があるからです。

(岡賀 敏文)

戻る    次へ

コメント・お問合せ