4.1 水道事業の経営と財務


Q96
無償資金協力プロジェクトが引き渡し後において経営・財務的にサスティナブルでなくてもやむをえないのですか





  Key words:無償資金協力、財務的サスティナビリティ

〈無償資金協力の目的と財務的サスティナビリティ〉
 水道は住民の日常生活にとって欠かせないものです。また、水道の普及によって住民の公衆衛生や生活を向上させる社会的な貢献にも寄与しています。そのために建設された水道施設は、安全な水を不断に供給する、サスティナビリティ(sustainability)であることが要求されます。そして、事業体は継続した施設の維持管理、運営を要求されるわけです。
 一方、無償資金協力は通常、プロジェクトを実施することによる被益効果が高く、かつ緊急性と優先度の高い案件に適用されます。しかし、それらのプロジェクトの多くは、当該プロジェクトが生み出すキャッシュフローをもってしては円借款などのソフトローンの元利支払いでさえまかなえないような、収益性に乏しい、もしくはそれ自身は収益を生み出せない非収益プロジェクトの多いのが無償資金協力の特色です。
 無償資金協力とはいえ、水道事業体は引き渡し後でも経営・財務的にサスティナブルであることが重要なわけです。維持管理・経営のための組織のないところや事業体の力の弱いところでは、事業体の組織づくりや強化を図る種々の方策を基本設計時に相手国政府に提言します。
 どんな小規模水道案件でも事業のサスティナビリティを考慮している例として、ユニセフ(UNICEF)が実施しているアフリカの旱魃地域の村落給水計画があげられます。これらの計画地域は給水が未整備で事業体も確立していなく、また、住民の水道料金支払いと維持管理能力が比較的低い地域です。計画では社会環境の考慮、住民参加による事業体の支援(コミュニティ内での水道委員会の創設)と、技術面 ではポイントソース(ハンドポンプ)による現地事情に適応した給水事業を建設することにより、引き渡し後の施設の維持管理・運営のサスティナビリティを維持することに努力しているわけです。JICAの無償資金協力案件もプロジェクト規模の違いはありますが同様の配慮をした計画内容です。

(岡賀 敏文)

戻る    次へ

コメント・お問合せ