学習教材を準備や貸与をはじめとした、学習環境の整備は受入れ施設により、大きく異なるようです。候補者の中は複数の施設間で、これらの情報を交換・共有している場合があります。そのために「○○病院では買ってくれるのに、○○病院では買ってくれない」という不満が噴出するのです。その他には、「○○病院では予備校に行かせてくれるが、○○病院では駄目といわれた」「○○病院では 毎日3時間の学習時間があるが、○○病院では週2日で2時間しかない」といった具合です。これらの情報は全てが正しいものではありませんがどんどん大きくなって拡散していきます。このように候補者が不満を感じる学習環境の整備は施設として改善可能な範囲で、まず実施することは必要です。
少なくとも、看護研修計画書等に記されていることが実施されていない場合には、「虚偽の計画」として受入れ停止等の対象になる可能性がありますので注意が必要です。
しかし、このような不満は、モチベーションの低下から起こることが多いです。そのため、モチベーション低下の要因を分析することが必要です。
成人学習では、自分自身の問題に気づいてはいるが、その事実を認められず目をそらさずを得ない状況等で、「他者への不満」という形で噴出することは多々あります。これは、プライドが高い候補者に多く見られる現象です。このような場面では、ひとまず候補者の不満を受け止めます。その後、具体的な改善策について実行可能なことや不可能なことを候補者と話し合いながら決めていきます。本来は分別のある成人ですので、頭で理解しながらも感情的に落としどころが見つからないことが多いものです。そのような時には、条件付きで一部を認めるという方法が効果的です。また、最終的には不満噴出の背景にある自己の問題に向き合える様に支援することも重要です。
学習支援の過程では、候補者のスランプにどう向き合うか、候補者のスランプをどうさせるかは大きな課題です。候補者のモチベーションには、気づかないうちに、指導者のモチベーションが投影されていることがあります。学習支援では、候補者とは一定の心理的距離を保ち、候補者の訴えを額面通りに捉えるのではなく、候補者の心情等を推し量ることができるような観察力と心の余裕も必要となります。