EPA候補者として看護師国家試験を受験できるのは原則として3回です。そのため、最終年度となる候補者は受験に対する不安から、准看護師試験の受験を希望する者も少なくありません。施設の方も、准看護師資格を取得させることで、就労期間を延長できるように配慮する傾向も見られます。しかし、最終年以前から安易に准看護師資格試験を受験させる施設も少なからず見られます。「候補者の希望」となれば「受験資格」の点では問題は無いのかもしれませんが、EPA候補者として来日していることを鑑みると、本来の目的からは大きく外れます。EPA候補者は正看護師の国家資格取得を目的に来日しており、JICWELSもこれを支援する事業を行っています。つまり、准看護師試験の受験は原則として想定していません。従って、正看護師資格を取得するための学習支援を中心に行うことが大原則です。
EPA事業においては、看護師不足を補う事業でないことが明言されており、正看護師として国家資格を取得して日本国で就業させることを目的にしています。看護師国家試験と准看護師試験とでは、試験内容が異なりますので、学習内容も若干異なります。何よりも、正看護師と准看護師の役割や業務内容を踏まえたとき、EPA候補者が准看護師として日本の医療機関で就労することは、本来の目的や候補者としての責務を果たさないことになります。受け入れ施設としても、本来の目的や責務を再考する必要があると思います。
とはいえ、施設の事情があることも事実です。また、候補者にも事情はあります。これらを踏まえると、一概にはいえませんが、個々の状況を勘案しながらも、原則を踏まえ、更には候補者の最大の利益を尊重した慎重な対応が必要と考えます。
受験回数に猶予がある段階での准看護師試験受験は、看護師国家試験受験のモチベーションを下げるだけで、利点はないと考えます。滞在最終年度の候補者は、緊急避難的に准看護師試験の受験もやむを得ないかもしれませんが、本来の原則的な目標はあくまでも正看護師資格の取得であることを再確認することが必要です。研修担当者の最後まで諦めない姿勢が、候補者のモチベーションを高め維持することは間違いありません。准看護師試験受験を全面的に否定するのもではありませんが、大原則に立ち返ることを切に願います。