国家試験対策の学習には、「座学を中心とした頻出項目の暗記学習」と「看護実践を通しての体験的学習」の2種類があります。
中でも看護実践での体験的学習は行動を伴うので、記憶が定着しやすいことはよく知られています。そのため、病棟勤務における職員の関わりは、OJT(On-the-Job Training)として大変有効です。勤務中の職員の関わり方を効果的な学習につなげるには、正しいOJTを理解することが必要です。
OJTは、意図的・計画的・継続的が3原則です。そのため、効果的なOJTでは、候補者の個別性を配慮し、看護師国家試験合格という目標を達成できるような指導項目と内容を意図的に決定する必要があります。また、実施においては、場面設定や指導内容を十分に計画します。指導の手順は、とりあえずやって見せることから始まります。説明を先に行いがちですが、見せた後での説明の方が、日本語の理解が不十分な場合には候補者の理解を助けます。
次いで大事なことは、必ず実践させることです。「見る」「聞く」だけでは、OJTにはなりません。見せて説明を済ませたことを、実際に体験してもらいます。無資格者ですから、できることと、できないことがありますので、それらを踏まえた、意図的な計画が重要になるのです。実際に体験させながら、注意点など細かな指導を加えることで、より体得しやすくなります。OJTで大切なのは、トレーニングであるということです。繰り返し行うことで初めて効果が出ます。一度限りの体験では、知識や技術の定着に結びつきません。継続的に行うことが必要です。
また、病棟勤務で行う時には、指導者毎に指導内容が異ならないように、標準的な業務内容を再確認してマニュアル化しておく必要もあります。このマニュアル作成は、業務内容や手順の確認等、標準的業務の確認と見直しにも有効です。つまり、OJTによる指導は、候補者のためだけでなく、病棟スタッフ全員の成長と、看護の質の向上にも繋がることなのです。病棟全体で取り組むことで、コミュニケーションも活発になり、信頼関係も増すでしょう。
しかし、この時、日本語が十分に理解できていない状況では、言葉による 指導は最小限に留め、候補者の体験からの学びを、候補者に表現してもらうのが効果的です。そして、その学びを共有し、ポジティブなフィードバックを繰り返すことで、モチベーションアップに努めることが重要です。