頼ることに慣れてしまった候補者に対して、主体的に学習できるようにさせるにはどうしたら良いでしょうか。

まずは、頼ることに慣れてしまった候補者の背景を、明らかにすることが重要です。その上で、必要な対応を検討しましょう。
学習支援の場面でありがちなのは、指導者が持つ「頼られることの満足感」を、候補者が必要以上に受け止め、「頼ることを演じている」という現象です。いわゆる「良い子」のタイプに多くみられる対人関係の取り方のひとつです。初めての教育や指導を担当した場合に、比較的多く見られます。
最初はどうしても、気負い過ぎて、与えることが多くなります。また、指導者が決めたルールや計画を行使しようするあまり、禁止事項が多くなりがちです。日常的に、「注意」や「禁止」が多いと、候補者は無力感から依存的になり、自ずと主体性はなくなります。このような、「注意」や「禁止」に応じた依存的な反応は、教育経験の浅い指導者にとっては、「服従させた」という満足感に繋がります。このような指導者の満足感を、敏感に感じ取った候補者は、指導者との円滑な対人関係を維持するために、指導者に満足感を与え続けようと、更に依存性を発揮していきます。こうなると、教育経験の浅い指導者は、依存を疎ましく思い、「主体性がない」という評価に変化していきます。
このような現象は、珍しいことではなく、新任教員が早々に陥る、負のスパイラルです。この時に重要なのは、指導者自身が、候補者の問題ではなく、「自己の問題である」と気づくことです。
候補者の主体性は、指導者が引き出すものです。候補者の主体性がないのは、指導者が候補者を依存的にさせ、主体性を奪っている可能性があります。候補者が依存的で主体性がないと感じる時は、候補者との心的距離が近づき過ぎていることが多々あります。俗に言う「巻き込まれた状態」です。最初は巻き込む側であったのに、いつの間にか巻き込まれていたというのがこの状態です。
このような場合には、一度、両者の関係性をリセットする必要があります。
そこで、候補者と一緒に「振り返り」を行い、目標設定や課題設定等の確認作業をはじめからやり直すことが有効です。この時、指導者は肩の力を抜き、候補者に任せることが重要です。禁止事項は候補者自身で見いだせるように、見守ることが必要です。教育においては、どのような場面でも、自分の指導そのものが、候補者の姿に投影されると、理解しておくのが良いでしょう。