【外国人介護人材を積極的に採用】
特定技能として海外からの直接雇用を行った兵庫県の特別養護老人ホームのケース

2022年3月28日

施設DATA

社会福祉法人友朋会 特別養護老人ホーム宙カミーノ WEBサイト

  • 施設種別:特別養護老人ホーム
  • 所在地:兵庫県神戸市
  • 事業所総職員数:37名(外国人職員ミャンマー2名、ベトナム5名を含む)
    うち特定技能外国人:3名(内訳:ミャンマー2名、ベトナム1名)

社会福祉法人友朋会は1993年(平成5年)に創設。2010年(平成22年)に神戸市に「特別養護老人ホーム宙カミーノ」を開設。利用定員は88名。全室個室でのユニットケアを実践している。明るく暖かい心を大切に、ご利用者様の尊厳を大切にケアされている。
法人全体では、EPA介護福祉士候補者や技能実習生、留学生、特定技能と多岐にわたる制度で外国人介護職員を受け入れられており、41名の外国人職員が就労している。

※取材日:2021年12月6日

目次

  1. Pick up
  2. 施設担当者インタビュー(施設部長、施設長、施設介護課長)
  3. 特定技能外国人職員インタビュー(イイさん・ピョーさんともに出身国ミャンマー)

 

– Pick Up –

“外国人雇用の制度理解をすすめるうちに、さまざまな制度のメリットを活かすようなスタイルになった”

“安心して働いてもらえる環境を私たちが用意することが大切”

“家での手伝いと介護の仕事はぜんぜん違う”

施設担当者インタビュー

〈インタビューを受けてくださった方〉 施設部長 千馬さん、施設長 中島さん、施設介護課長 竹田さん

 

採用経緯・手続きについて

外国人雇用の制度理解をすすめるうちに、さまざまな制度のメリットを活かすようなスタイルになった

――今回お伺いしている特別養護老人ホーム「宙カミーノ」はじめ、運営母体の友朋会では外国人人材を積極的に採用しているそうですね。

施設部長 千馬さん(以下、敬称略) 3施設ある老人介護施設全体で41名の外国人職員の方が就労しています(2022年12月現在)。当法人では2018年のEPAを皮切りに、技能実習生、介護留学生、そして特定技能と、介護分野で活躍していただける外国人の方を、さまざまな制度のもとで受け入れてきました。特定技能でいえばその目的は「就労」になりますので、人手不足解消のために雇用に至ったというかたちです。

――EPA、技能実習生、留学生、特定技能と、それぞれ違う制度を利用して感じた強みや難しさがあれば教えてください。

施設部長 千馬さん

施設部長 千馬さん

千馬 EPAは、国家試験取得のためのスキームが確立していますよね。また、技能実習制度も期間内に評価試験があります。このような試験のための教科書やOJTのチェックシートといった、すでに出来上がった仕組みは特定技能外国人の方にも活用できると感じ、指導に転用しています。もちろん意図したことではなくて、外国人雇用の制度理解をすすめるうちに、さまざまな制度のメリットを活かすようなスタイルになっていったんです。

――違う制度のもとで働く外国人の皆さんと接するにあたり、気をつけていることはありますか。

千馬 制度ごとに異なるルールを理解することは大切ですが、制度を過剰に意識するのではなく、あくまで法人の中で働く「一職員」としてコミュニケーションするようにしています。当法人の理念は、「個を尊重し 今を大切に 共に生きる」。ルールや国籍を重視するというより、あくまで一人ひとりの「個」同士として接するようにしています。

――2016年から外国人人材を受け入れているということですが、特定技能での受け入れに際し、不安はありましたか。

施設長 中島さん

施設長 中島さん

施設長 中島さん(以下、敬称略) もちろん、「独り立ちまできちんと指導できるだろうか?」という不安はありました。ただ私個人としては、ワクワクした気持ちのほうが大きかったんです。まさに異文化交流で、外国の方から学ぶ点はたくさんあるはずだと考えていました。ただ今回、特定技能で来てくれたイイさん、ピョーさんの来日が決まったのがなんと2週間前。大慌てで職員全員に使っていない家財道具のカンパを頼んだら、洗濯機やカーテン、フライパンまで、生活に必要なものを奇跡的に一通り揃えることができました(笑)。逆にうまくいかなかったのは、住まいの確保。法人契約でも外国の方に部屋を貸してくれる大家さんは多くなく、苦労しました。そんなこともあり、最初のうちは施設から遠い場所での生活になってしまったのは申し訳なかったです。

――登録支援機関はどのように選定しましたか。

千馬 登録支援機関の中にはお金の話ばかりしてくる企業もありましたが、今回ご一緒させていただいた登録支援機関さんは外国人職員の方の将来を一番に考えていました。その点が、「個を尊重し 今を大切に 共に生きる」という法人理念とも合致し、安心してご一緒できるとい思いました。

 

受け入れ準備・支援について

安心して働いてもらえる環境を私たちが用意することが大切

――外国人人材の受け入れにあたって、どのような準備をしましたか。

施設介護課長 竹田さん

施設介護課長 竹田さん

施設介護課長 竹田さん(以下、敬称略) 入職前に委員会を設置し、日本人職員に対して理解を深める話し合いの場を持ちました。その中で、イイさん・ピョーさんの祖国・ミャンマーや生活習慣の違いを理解するため、「相手を知ることからはじめようね」と、皆の気持ちを一致させました。介護の仕事にあたっては、職員それぞれの「自己流」を教えてしまっては混乱させてしまうので、事前に自分たちのやり方・伝え方をあらかじめ統一したんです。

千馬 そうでしたね。職員が自らの動作を振り返ることで、スキルの底上げにもつながった気がします。事務的な対応では、契約書や請求書といった難しい書類にはすべてルビを振り、説明をするようにしました。また以前から技能実習生には指導員と生活面での相談員を配していましたが、相談の窓口が多ければ、より悩みを打ち明けやすいと思っていました。まして私は男なので、女性の相談員もいたらより話しやすいのではと思い、現場に女性相談員の方も入っていただきました。

――生活の中ではケガや病気など、さまざまな不測事態が起こりますしね。

中島 少し前にピョーさんが体調を崩すことがあって、本人もとても不安そうでかわいそうでした。知らない国で病気になるって、本当に心細いでしょう。生きている以上、病気やケガはつきものですから、ピョーさんの時も相談員が常に病院に付き添い、診察内容や薬についてフォローするようにしました。

千馬 骨折ややけどなど、これまでも本当にいろんなハプニングありました(苦笑)。アクシデントが起きるのは日本人職員も同じですが、親御さんと遠く離れた異国の地で働いている外国人の方には、特に手厚いフォローが必要だと思っています。安心して働いてもらえる環境を私たちが用意することが大切ですよね。

――生活面での手厚いフォローに加え、学習面ではどんなバックアップをされていますか。

竹田 先ほども申し上げましたが、入ったばかりの外国人職員の方に対しては指導する現場職員を固定し、ブレのない、統一されたレクチャーをするようにしています。加えて現場の方の発案で、介護の専門用語をわかりやすくまとめた「語録集」を作成しました。「移乗」や「褥瘡(じょくそう)」といった、ポケトークでもなかなか出てこない、日常的によく使う介護用語を説明しています。

千馬 これは日本人も同様ですが、介護福祉士の国家試験合格を目標に、資格取得支援としてテキスト購入費はすべて法人負担にしています。また、国家資格をもった職員の勉強会や実務者研修も全額補助しています。

 

特定技能外国人職員の良さついて

ずっと一緒に働けたらいいですね。

――イイさん、ピョーさんを迎え入れたことで、日本人職員へのプラスの相乗効果を感じますね。

中島 「相手に伝える」ことを、より意識するようになりました。日本人職員は彼女たちへの指導にあたり、自分の介護技術を振り返り、基礎を叩き直しているようです。

竹田 彼女たちは、「周りの人を大切にすることが、自分のハッピーに繋がる」という気持ちを持った方々。本当に、ずっと一緒に働けたらいいですね。

――今後、外国人介護職員の方に期待することは?

千馬 介護福祉士になってもらって、日本で長く働いてもらいたいですね。来日された時から本当にプロ意識が高く、他の職員もその高いモチベーションに引っ張られていると感じています。そういった意味でも、イイさん・ピョーさんの存在は大きいですよね。

竹田 利用者さまにとって、職員の国籍は関係ありません。イイさんもピョーさんも、他の職員よりむしろすぐに名前を覚えられていて、信頼を勝ち取っている印象があります。

中島 「家族のために働く」という理由もブレないですよね。そのひたむきさに周りの職員たちが皆、感動しています。人間関係を大切にする2人に影響されて、私たちもよりお互いを大切に思えるようになった気がします。

――では最後に、外国人介護人材の受け入れを検討している施設の皆さんにアドバイスをお願いします。

千馬 必要以上に「外国人/日本人」と分けて考える必要はありません。制度の理解は大切ですが、そこにとらわれすぎることなく、一人の職員として向き合うこと。そんなシンプルなことでいいのではないでしょうか。あとは困ったときに対応できるサポート体制をアップデートし続ける気持ちがあれば大丈夫です!

 

外国人介護職員インタビュー

〈インタビューを受けてくださった方〉

イイさん

イイさん

出身国:ミャンマー
母国では病院での看護助手の経験がある。
特定技能の在留資格で、日本に初来日。
2020年12月より現施設で就労を開始。
日本語能力試験N3を取得。

ピョーさん

ピョーさん

出身国:ミャンマー
2015年から2017年まで技能実習生2号(縫製業)として活動。
一度本国へ帰国した後、再来日。
2020年12月より現施設で就労を開始。
日本語能力試験N4を取得。

 

賃金の良さも大きな魅力でしたね。

――日本を選んだ理由を教えて下さい。

イイさん

イイさん

イイさん(以下、敬称略) 大学卒業後、友だちに紹介されたのがきっかけです。日本人は多くの人がきちんと約束やルールを守ります。街にはゴミも落ちていないし、道端にきれいな花や果物が咲いていても、誰も盗りません(笑)。ミャンマーに比べたら賃金もよく、安心して生活できるので選びました。

ピョーさん(以下、敬称略) 私は2015年に技能実習生として来日したことがあり、日本での生活になれていたので選びました。イイさんと同じく、賃金の良さも大きな魅力でしたね。

――日本での生活はいかがですか。

ピョー 静かで落ち着いた環境で生活ができています。休日に三宮までタイ料理を食べるのが楽しみです。

イイ 二人で買い物をしてミャンマー料理を作って食べるのも楽しいです。気になるのは、ご近所さんと仲良くしないこと。ミャンマーでは、隣近所はみんな知り合いだけど、日本では隣にどんな人が住んでいるかもわからない。ご近所付き合いをもっとしたいです(笑)。

 

家での手伝いと介護の仕事はぜんぜん違う

――介護の経験はあったのでしょうか?

ピョーさん

ピョーさん

ピョー 元々ミャンマーでは親や祖父母の面倒を見ていましたから、できると思っていました。でも、施設で利用者さまに対する介助はまったく別ものでした(苦笑)。

イイ 家での手伝いと介護の仕事はぜんぜん違うよね(笑)。でも名前を覚えてくれる利用者さまもいて、とても嬉しいです。お風呂やお手洗いに行く時、私じゃないと行かない利用者さまもいます。私がいないと「いやいや」って。とても嬉しいですよ。

――利用者の方にとても信頼されているんですね。

イイ 最初は日本語もあまり話せないし、読めない漢字も多いから、本当に生活や仕事ができるか心配でした。でも職員の皆さんが優しく丁寧に教えてくれるので、安心して介護の仕事に打ち込めています。

――今後の目標を教えて下さい。

ピョー 介護福祉士の国家試験の勉強を頑張って資格を取りたいです。

イイ そうですね。それと、私はとにかく平和に暮らすことが一番。周りの皆さんに感謝しながら、今日一日を一生懸命生きていきたいです。

(記事作成:国際厚生事業団 外国人介護人支援部)

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