2022年3月28日
社会福祉法人希望の丘 特別養護老人ホーム聖母園 WEBサイト
- 施設種別:特別養護老人ホーム
- 所在地:福岡県三井郡大刀洗町
- 事業所総職員数:47名(内、外国人職員ベトナム1名、フィリピン1名、ネパール(アルバイト)3名を含む)
うち特定技能外国人:1名(内訳:ベトナム1名)
1986年(昭和61年)9月1日開設。開設から20年を経て、従来の4人部屋から個室に、集団ケアから個別ケアにと、入居者の自立支援、生活の質の向上そして何より入居者一人一人の尊厳を守るためにユニット型特別養護老人ホームとして整備した。入所定員50名・ショートステイ12名。6つのユニット。建物は木造平屋作りで、全館床暖房であり、上履きを使わず入居者が自分の足でしっかり立つということを大切にしている。「一人ひとりの笑顔を大切に」という事をいつも意識し、介護福祉施設サービスを提供している。
※取材日:2021年12月18日
目次
– Pick Up –
“「この日本語をどうかみ砕けば伝わるか」我々自身が仕事への理解度をより深める機会をもらったと思っています”
“今では彼女を指名する利用者さんも少なくありません”
“高齢者のお世話をする毎日は喜びです“
施設担当者インタビュー
〈インタビューを受けてくださった方〉 施設長 萩原さん、主任生活相談員 林さん、ユニットリーダー 内田さん
採用経緯・手続きについて
「郡部」にある我々のような田舎の施設には人っ子一人こないんです。
ここ数年は特に介護人材不足に悩まされており、そういった意味で自然と外国に目が向きました。
――外国人人材を採用した理由を教えてください。
施設長 萩原さん(以降、敬称略) 人材確保の一言に尽きます。就職ガイダンスに出ると、福岡市の施設には長蛇の列ができるのに、「郡部」にある我々のような田舎の施設には人っ子一人こないんです(苦笑)。ここ数年は特に介護人材不足に悩まされており、そういった意味で自然と外国に目が向きました。
――ライさんの採用経緯はどのようなものだったのでしょうか。
萩原 実は技能実習生を受け入れる予定で、2019年にフィリピンに視察まで行ったんです。でも、新型コロナの影響で頓挫してしまって。その時にお世話になっていた人材派遣会社の方から、「技能実習期間が終了したけど帰国困難になっている方がいるので、一度お会いしてみませんか」と紹介いただいたのがライさんでした。
――登録支援機関はどのように探したのでしょうか?
萩原 彼女を紹介してくれた会社は登録支援機関ではなく人材派遣会社だったんですが、ライさんの受け入れにあたり、登録支援機関として申請をしてくれたんですね。おかげで他のところを探さずに済んだのと、そこまで親身になってくださる姿勢に感動して、ご一緒させてもらったかたちです。
――住まいの確保や行政手続きはどのようにされましたか。
萩原 ビザはあえて行政書士にお願いせず、調べながら自分でやりました(笑)。当法人の理事長がイタリアでの留学の際、ビザの更新の時に現地の人に親切にしてもらったおかげでなんとか手続きできたそうなんです。その経験から、「お金を出せば済むことを、労を惜しまず一緒にやってみなさい。そうすればわかることがたくさんあるでしょう」というお話があり、なるほどと納得して挑戦しました。大変でしたが、たしかにこれを外国の方がやるのは本当に大変なことだと身体で理解できましたね。住居に関しては、運営母体の修道会の協力により建物を貸していただき、そこを寮として提供することができました。職場にも近く安心で、このあたりはスムーズに対応できたと思います。
受け入れ準備・支援について
「この日本語をどうかみ砕けば伝わるか」我々自身が仕事への理解度をより深める機会をもらったと思っています。
――外国人介護人材の方と働くことにあたり、受け入れ前に現場で準備したことはありますか。
萩原 いろんな職員でなく、ライさんに関わる職員を固定し、彼女の学びの進捗具合を共有することで育成がスムーズにいくと考えました。
主任生活相談員 林さん(以下、敬称略) 指導にあたっては机上より、実際に見てもらって一緒にやるのが一番伝わります。そういった意味でも、現場で教える職員の介助方法がバラバラではライさんを混乱させてしまうので、受け入れ前に動作を統一することを心がけました。
ユニットリーダー 内田さん(以下、敬称略) 特に効果的に感じたのは、何でも「見える化」すること。「Aさん」のコップとわかるようにシールを貼る、水の量がわかるように「メモリの3まで」マークするといったように、個々への対応が目で見えると、日本語の習熟度にかかわらず確実に伝わるなと感じました。
――学習面ではどのようなサポートをされていますか。
萩原 福岡県の主催する「外国人介護職員介護技能等向上研修」に参加しています。毎週一度オンラインで開催されているのですが、身体の部位を覚えるところからはじまって、今は介護現場で使う言葉の読み書きを教わっています。終わったあとは研修レポートを送ることになっていて、それに対してもひとつひとつ添削してくれるんです。集合研修というさらに踏み込んだ指導もあり、無料なところも含めて大変助かっています。
林 ライさんが入ってすぐの頃は、萩原施設長が漢字の勉強をマンツーマンでやっていましたよね。その土台があるからか、ライさんはきれいな漢字を書きますよ。
――賃金などの労働条件で気をつけた点はありますか。
萩原 すべて日本人職員と同じ条件にしています。母国で大卒なら、日本人の大卒と同じ、といったような対応ですね。当施設の場合、入職半年後から夜勤につくようになるんですが、ライさんの場合はまだ日本語に不安があり、夜中の緊急事態に対応するのは難しいだろうと、シフトには入れていなかったんです。そうしたら後日ライさんが、「他の人はみんなやってるのに、私だけ夜勤につけてもらってない。信頼されていないのではないか」と、支援機関の人の前で泣いて訴えていたと聞いたんです。こちらは大変だろうからという理由で夜勤につけていなかったのですが、違った意味でライさんを不安にさせてしまっていたんですね。他の職員と違う対応をするなら、その意味まできちんと説明しないといけないと学びました。
――特定技能外国人を受け入れたことで「相乗効果」はありましたか。
内田 自分たちが「見られる立場」であるということを意識するようになり、きちんとした介護ができているのかという振り返りになりました。ライさんのおかげで、我々自身が仕事への理解度をより深める機会をもらったと思っています。
林 あと、「この日本語をどう噛み砕けば伝わるか」を職員全員が考え続けています。その言葉で伝わらないなら、別の言葉に言い換えなくちゃいけないですからね。本当に我々も勉強になっています。
萩原 記録の際の「字」も気をつけるようになりました。たいがいの字は日本人同士だと読めてしまうけど、ライさんにはそれは通用しない。だからこそ、丁寧に記録するようになりました。
あと私は早口なんですが、わかりやすいよう、ゆっくりしゃべるようになりました。それは利用者さんのためにもなること。気付かせてくれてありがたいことだなと思っています。
外国人職員の働きぶりについて
今では彼女を指名する利用者さんも少なくありません。
――がんばり屋のライさんですが、利用者さんとのコミュニケーションはいかがですか。
内田 入職前は「外国の人なんて大丈夫?」と心配される方もいましたが、今では彼女を指名する利用者さんも少なくありません。ライさんの努力によって、信頼関係ができていると思います。
林 利用者さんから指名されるなんて羨ましいかぎりです(笑)。
――ライさんは仕事への意識が高いんですね。
内田 覚えもすごく早いです。だからこそ施設長が言ったように、我々としては言葉を惜しまず伝え続けないといけないと思っていて。たとえばAさんならAさんという人の介助を「なぜこういうやり方で行っているか」、日本語で説明しないといけません。ライさんは「動き」として覚えるので、我々が行うAさんの介助を見た後、同じやり方でBさんに接しようとするのは当然のこと。だから我々は、「なぜAさんにこういう介助が必要か」を伝えていくことが大切なんです。一方、ライさんは介護未経験者で、その後にネパールから来た3人の留学生は学校で福祉や介護の勉強をしてきています。我々はそういった理解の差で外国人職員を区切ることなく、ライさんにはライさんの教え方、留学生には留学生の教え方をして、一人ひとりに対応するようにしています。
林 ライさんの中には、「外国から来ている自分は言葉もスキルも周りの人より劣っている」という意識があるのでしょう。そんな中で、「仕事を完璧にしたい」というプライドももちろんあって。そういった気持ちを尊重しながら、できていること、できていないことをきちんと把握して指導していくことが大切かなと思います。
――今後、ライさんにどのようなことを期待しますか。
内田 新人の育成や実習生の指導など、自分の与えられた仕事だけでなく、その仕事を他の人に伝えていく立場になっていってほしいと思います。またベトナムから来ている彼女なので、他の外国の方と我々との橋渡しになってくれたら嬉しいですね。
萩原 5年後どうされるかわかりませんが、できれば介護の資格を活かした仕事についてもらって、その技術を世界に広めていってほしいですね。
林 私は一日でも長く聖母園で働いてほしいです(笑)。5年は短すぎるので…!
――では最後に、特定技能外国人の受け入れを検討している施設の方にアドバイスをお願いします。
内田 最初は言葉のことばかり心配していましたが、実際に関わっていくと、伝え方を工夫すればいくらでもコミュニケーションは可能だとわかり、心配は杞憂に終わりました。文化の違いを互いに教え合いながらチームを作っていけば、日本人も外国人も関係ないと思いますよ!
萩原 まったく知らない土地に一人で来たら、どんなに心細いでしょう。そのことをいつも忘れることなく、誰にでも親切にすることを心がけています。理事長の言葉の受け売りになってしまうのですが、文化というのは、掃除の仕方ひとつとっても違います。日本人は上からはたきをかけて床を掃除しますが、国がかわれば、はたきを使わない国もある。そういうとこを理解しないといけないのだと思います。
外国人介護職員インタビュー
〈インタビューを受けてくださった方〉
出身国:ベトナム
2016年から2020年まで技能実習生(電気機器組立工場)として活動を行い母国へ帰国する。
再入国後、新型コロナウィルスの影響で3号の途中で電気機器組立工場の雇止めにあう。
特定技能野試験を受験し、2020年11月より現施設で就労を開始。
日本語能力試験N3を取得。
ぜひ日本人の働き方を学びたい
――技能実習生としてすでに日本にいらっしゃったそうですね。
ライさん(以下、敬称略) 岡山県にいたのですが、新型コロナの影響で実習先から雇い止めになってしまったんです。それから特定技能の介護に切り替え、今の施設で働けることになりました。
――日本を選んだ理由はなんだったのでしょう。
ライ 経済発展している国なので、そんな国の働き方を学びたいと思って来日しました。
――お休みの日は何をしていますか。
ライ 電車とバスを乗り継いで、2時間かけて博多まで遊びに行きます。お寿司が一番好きですね。肴は好きだしベトナムでも海の側に住んでいましたが、カナヅチです(笑)。
高齢者のお世話をする毎日は喜びです
――介護の仕事はなれましたか。
ライ 大変ですが、仕事は何でも大変ですから介護に限ったことではありません。利用者さんのお世話をすることはとても楽しいです。職員の皆さんもみんな優しくしてくれるので、それがとても嬉しいです。ただ方言が難しいですね。「我慢できない」を「もーもてん」って言うとか。漢字も難しいです。
――将来の夢を教えて下さい。
ライ 介護福祉士の試験に合格したいです。そうすれば日本にずっと住めます。ベトナムとは賃金が全然違うので、ずっと日本にいたいんです。将来は親に家を建ててあげたいです。
(記事作成:国際厚生事業団 外国人介護人支援部)
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公益社団法人 国際厚生事業団 外国人介護人材支援部
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