【国籍は関係ない】外国人職員と日本人職員がチーム一丸となって利用者に向き合う、京都府の特別養護老人ホームのケース

2023年10月13日

施設DATA

社会福祉法人かなえ福祉会 特別養護老人ホームすないの家桂 WEBサイト

  • 施設種別:特別養護老人ホーム
  • 所在地:京都府京都市
  • 事業所内の外国人職員:
    特定技能外国人11名(ベトナム人3名、インドネシア人4名、インド人4名)
    技能実習生2名(ミャンマー人)

社会福祉法人かなえ福祉会は、愛知県名古屋市に本部を構え、愛知県と京都府を中心に、保育事業や高齢者福祉事業を展開しており、高齢者福祉事業として、特別養護老人ホーム やグループホームを運営 しています(取材日現在)。
外国人職員の受入れについては、2020年に特定技能外国人の受入れを開始されました。
受入れ当初は、近隣の事業所で外国人職員を受け入れる事例も少なく、現場の日本人職員の抵抗感もあったようですが、現在は、介護を通じてその利用者の方との関係性がしっかりできているのであれば、日本人職員も外国人職員も関係ないというお考えを持たれているとのこと。
『外国人職員だから』という括りではなく一緒に働くチームの一員として受入れをされている様子や現場での指導状況等を取材しました。

※取材日:2023年2月7日

目次

  1. Pick up
  2. 施設担当者インタビュー(施設長、介護主任)
  3. 特定技能外国人職員インタビュー(アクシャイさん、スリダラさん(両名ともインド出身))

 

– Pick Up –

“介護を通じて利用者の方との関係性ができていれば、日本人職員も外国人職員も関係ない”

“業務時間内に日本語研修に出てもらうことは、周りの日本人職員に頑張っている姿を見せることにも繋がる。

“外国人職員に同じ国籍の後輩への指導をサポートしてもらえ、新しい指導方法につながっている。”

施設担当者インタビュー

〈インタビューを受けてくださった方〉

  • 特別養護老人ホームすないの家桂
    施設長 藤原様
    介護主任 島田様

 

◆受入れ当初は不安もあったが、想像しているよりも早く利用者の方に受け入れてもらえた―

Q:初めて外国人職員を受け入れることになったときのことを教えてください。

藤原様(以下、敬称略):当時、私は介護主任をしており、施設内の職員へこれから外国人職員が一緒に働くことになるという話をしたのですが、日本人職員からは、批判的な声が多かったです。その際、私からは、不安もあると思うが、実際に一緒に働く上で日本人職員と変わらない対応をしてもらいたいと話しました。

Q:外国人職員の受入れ当初、不安はありましたか。

島田さん(以下、敬称略):日本人職員というよりは、利用者の方が外国人職員を受け入れていただけるのかなという不安は、正直ありました。しかし、実際に外国人職員が入職すると、私たちが想像していたよりも早く、利用者の方は受け入れてくださいました。もちろん背景には、彼ら(外国人職員)の利用者の方に対する振る舞いや声掛けが非常によかった、というのがあると思います。そうした接し方があって、すぐに利用者の方も受け入れてくださったのかなと思います。

Q:業務指導の体制を教えてください。

島田:配属される各ユニットにユニットリーダーがいますが、メインとしてユニットリーダーが指導し、指導した内容を、他の日本人職員には、「こういう風に説明をしたので、次はここを見てあげてほしい」と伝えました。メインの指導者はユニットリーダーで、ユニットリーダーがいないときには他の日本人職員に指導をお願いできるように連携を図った形です。

Q:一人で夜勤に入れるようになるまでの指導過程を教えてください。

島田:最初の1~2か月は昼間を中心に、とにかく利用者の方を覚えてもらい、自分のことも利用者の方に知ってもらう、というようなコミュニケーションの仕方をしてもらいました。3か月目には、早出・遅出を加え、日中帯で日本人職員がやっている早出・日勤・遅出に勤務シフトを絞りました。もちろん、そこにも日本人指導者がついていました。当施設では、1つのフロアに利用者の方が20名おられ、夜勤に入る上で、担当ユニットの10名と反対側のユニットの10名のことも覚えてもらう必要があります。3~4か月目に一日の半分に入ってもらうことで、だいたいの介護技術や利用者の方の特徴も把握できますので、そこができたと判断がとれたら夜勤に入ってもらうことにしました。

 

◆業務時間内に日本語研修に出てもらうことで、日本人職員にもがんばりをわかってもらいたい

Q:日本語学習について、どのような支援をしていますか。

藤原:京都市内の特別養護老人ホームの施設長が集まる会議があり、そこから各法人に外国人職員向けの日本語研修があるという情報発信があるので、その研修を利用しています。今のところ、京都市にある当法人の2つの特別養護老人ホームで就労する外国人職員には、この研修に出て授業を受けてもらっています。公休日ではなく出勤日に業務として、出てもらっている形です。

業務時間内に研修に出てもらう理由としては、外国人職員本人たちの勉強になるので法人としても受講してほしいことと、外国人職員がこれだけ日本語の勉強を頑張っているということを日本人職員に理解してもらいたいということがあります。この研修に出るのと出ないのとでは差が出てくるので、日本語上達のためにも、また彼らが一生懸命頑張っている姿を日本人職員に見てもらうためにも、業務時間内に受講してもらっています。

Q:生活面は、どのように支援されていますか。

藤原:寮という形で家を準備しています。インドの方でしたらインド人同士、インドネシアの方でしたらインドネシア人同士と、国籍が同じとなるようにしていて、またキリスト教とイスラム教など、宗教が異なる場合はそこでも分けています。

また、3か月に一度くらいは、お部屋を訪問して何か不便がないか確認をしています。これまであった例としては、隣の部屋の騒音で困っていると聞いたので、外国人職員本人と隣の方とでトラブルにならないよう、施設の者がすぐに間に入って対応したということがありました。

Q:一時帰国をする際のルールがあれば教えてください。

藤原:有休を使って2週間程度のお休みがとれるように、介護主任とユニットリーダーにお願いしています。また、お休みの前日と戻ってきた日の勤務シフトについても考慮するようにしています。来月すぐに帰りたいと言われると、正直厳しい部分もあり、なるべく早く伝えてほしいということは外国人職員に伝えています。外国人職員も日本人職員も連休がとれるようにしていきたいと思っているので、外国人職員にも日本人職員にも、連休をとる時期はなるべく早く教えてほしい、と。もちろん、緊急で休暇が必要になる分には全く問題はないのですが。

 

◆外国人職員の人数が増えたからこそ、外国人職員同士での指導など、新しい指導法ができる

Q:外国人職員が増える中での相乗効果はありますか。

島田:外国人職員の人数が増えたからこそできるようになったことはあります。実際に、アクシャイさんとスリダラさんには、新たに同じインドから特定技能制度で来日した2名の職員を教えてもらっています。もちろん、メインで教えるのは基本的にユニットリーダーですが、日本語で伝わりにくいところやニュアンスが少し違うなという部分は、母国の言葉で伝えてもらうという方法をとっています。外国人職員が増えたから手薄になったというよりも、むしろ手厚くなったといえると考えています。外国人職員の人数が増えたがゆえに今までできなかった新しい指導方法ができるようになり、むしろプラスになっていると感じています。

Q:特定技能外国人の方に期待することはありますか?

藤原:まず、夢をもって来日されたと思うので、自身の夢を実現できるように動いてもらいたいなと思います。介護福祉士になりたいという夢があるのであれば、介護主任・ユニットリーダー・日本人職員とも協力をしてバックアップしていきたいです。あと、外国人だからリーダーができないという考えは古いと思っていて、ユニットリーダーにも、介護主任にもなってもらいたいという思いがあります。

 

◆介護を通じて利用者の方との関係性ができていれば、日本人職員も外国人職員も関係ない。

Q:外国人職員の受入れや支援をされてきた中で、特に大切だと思うことがあれば教えてください。

藤原:外国人職員だからできない、ということをしたくないなと。できるようになってもらうために、日本人職員にも指導をしてもらうし、できないのであればなぜできないのか、できるようになるためにはどうしたら良いかを介護主任とも話します。なるべく「自分は必要とされているんだ」というのを外国人職員にも感じ取ってほしいですし、また、そのためには、日本語の勉強も努力しないといけないねという話を外国人職員に対してさせてもらってもいます。

島田:職員一人ひとりに「国籍関係なく」という心構えを持ってもらうよう声掛けはしていたのですが、受入れ当初はそれでも、「外国人職員だから」という声や、「外国人職員を一人にしておくのはどうか」という意見もありました。ですが、実際にアクシャイさんやスリダラさんは、1~2年経った今、夜勤も一人で任せられますし、もし仮に、日本人だからインド人だから、ベトナム人だから…と線引きをしたとして、結果的に利用者の生活が継続できなくなるのではないかと思っています。

私たちの支援は、あくまでも利用者の方の日常生活の支援ですから、介護を通じてその利用者の方との関係性がしっかりできているのであれば、日本人職員も外国人職員もなんら関係ないのではないか、と思っています。

外国人介護職員インタビュー

〈インタビューを受けてくださった方〉

 

アクシャイさん、スリダラさん

出身国:インド
母国では大学で看護を学んだ後、病院で看護師として就労
2020年10月にインドより介護分野の特定技能で来日し、特別養護老人ホームすないの家桂での就労を開始。
途中、約4か月別法人へ転職後、再び特別養護老人ホームすないの家桂へ戻り、就労。

 

〇アクシャイさん

◆最初は難しかった記録の書き方も、日本人職員が親切に教えてくれたおかげで上達しました。

Q:入職後、介護業務が一人でできるようになるまでのことを教えてください。

最初の6か月くらいは勉強みたいな期間で、誰かについて働いていましたが、どんどん一人でできることが増えて、今は日中でも夜勤でも一人で行っています。

Q:リーダーさんはどうやって教えてくれますか。

分からない専門的な言葉や漢字が出てきたら、先輩やリーダーさんに聞いて教えてもらいます。記録で間違いがあると、この漢字は間違っていますよと、日本人職員がメモで書いて教えてくれるから助かります。

Q:介護記録はどうやって日本語で書けるようになったのですか。

最初は緊張して、前に書いた内容と同じことを書いたり、バイタルだけを書いたりしていましたが、少しずつ新しい漢字を勉強して、どんどん書けるようになりました。リーダーさんやケアマネジャーさん、施設長も、「記録は、同じことを書くものではないので、何か新しいことがあれば、利用者さんの生活がわかるように新しいことを書いてほしい」と言って応援してくれました。今は、新しいことがあれば、ちゃんと日本語でがんばって書くようにしています。

◆以前の配属ユニットにいる利用者さんたちとも、挨拶をしたり、積極的にコミュニケーションをとっています。

Q:アクシャイさんは利用者さんとの関係もとても良いと聞きましたが。

前は施設の2階で働いていましたが、そこの利用者さんとは、とても親しくしてもらっていました。今は5階で働いていますが、毎日仕事のあと2階に行って、利用者のみなさんと話してから帰っています。あと、仕事に来るときも、窓の方に座っている利用者さんに手を振って挨拶したりしています。

 


○スリダラさん

◆最初は、聞き取った後に はやく 応答することや関西弁が難しかったですが、日本人スタッフに何度も聞いたり、日本語研修に出ることで、話せるようになりました。

Q:日本で介護の仕事を始めた頃、最初はどのようなことが難しかったですか。

最初施設に来たときは、聞いたことに対して早く応答するのが難しかったです。あと、京都なので関西弁の言葉もいっぱいあって、それも新しい言葉なので、話せるようになるまでに時間がかかりました。わからなかったときは、日本人のスタッフに何回も聞いたりしました。そして、京都市の学校に研修に行って、そのあと関西弁もちゃんと聞き取れるようになったかなと思います。

Q:利用者さんから「スリちゃん」と呼ばれていると聞きましたが。

前は5階で働いていて、そのときは利用者さんに「スリちゃん」と呼ばれていました。今は3階で働いていますが、5階では名前を覚えてくれている利用者さんもいて、私もびっくりしました。「よく覚えていますね」と。

 

◆後輩指導もしています。わからない言葉を自分たちの言語ややさしい日本語で伝えたり、どうやったら安全な介護ができるのか、利用者の情報なども伝えるようにしています。

Q:後輩の指導もしていると聞きましたが、どんなことをしているんですか?

インドから後輩が2人きて、5階にアクシャイさんと1人が、3階に私と1人がいます。2人とも最近来たので日本語をそんなに話せるようになっていませんから、わからないときは、わかるように私たちの言語で説明して、そのあと日本語でもゆっくり説明してあげて、手伝っています。

あと、介護のやり方とかも教えています。たとえば、安全にどうやって移動できるかとか、あとは利用者さんの性格についても説明しています。利用者さんのものを触らせてもらうときでも、人によって違いがありますから。

(記事作成:国際厚生事業団 外国人介護人支援部)

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