【長期的な外国人介護人材の定着に向けて】法人が主体となって、外国人職員を日々サポートしている宮崎県のグループホームのケース

2024年2月16日

<strong>施設DATA</strong>

有限会社ウエハラ グループホーム幸ちゃんの家2号館 WEBサイト

  • 施設種別:認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
  • 所在地: 宮崎県小林市
  • 事業所内の外国人職員:計17名(2023年6月時点)
    • 特定技能…11名(ベトナム人2名、インドネシア人9名、中国人2名)、
    • 技能実習生…4名(ミャンマー人)

有限会社ウエハラは、宮崎県でグループホーム、ショートステイ、デイサービス等、10の介護事業所を運営されている法人です。
技能実習制度の創設時から外国人職員の本格的な受入れを行っており、特定技能においても、制度開始当初から受入れをされています。
外国人職員の方へは中長期的な定着を期待していることから、介護福祉士国家試験の受験に対する支援や、地域の方との関わりも重視した指導をされているとのことです。
1本目の動画では、法人のご担当者と、長年関わりのある登録支援機関のご担当者へ、外国人職員の定着に向けて実施している支援内容について伺いました。
2本目の動画では、介護福祉士国家資格の取得を目指し、資格取得後は在留資格「介護」に切り替えて、介護職として長く日本で就労することを希望している外国人職員2名にもお話を伺いましたのでご紹介いたします。

※取材日:2023年6月13日

目次

  1. Pick up
  2. 担当者インタビュー ~法人、登録支援機関のご担当者~
  3. 特定技能外国人職員インタビュー ~トゥイさん(ベトナム)、ソウさん(中国)~

 

– Pick Up –

“特定技能としての5年間が終了した後、帰国するか日本で就労を継続するか、自分の意思で選択できるように介護福祉士国家試験の学習を支援”

“初任者研修、実務者研修は受入機関内で開講。授業の進度や理解度をこまめにチェックしながら、合格できるようにサポート”

“地域に溶け込んでもらって、外国人職員が働いているから利用者に選んでもらえる法人、職員に成長してもらいたい”

施設担当者インタビュー

〈インタビューを受けてくださった方〉

  • 法人ご担当者 上原 正義 様
  • 登録支援機関ご担当者 斉 春雷 様

 

Q:外国人職員を初めて受け入れるときの職員の反応を教えてください。

上原様:外国人を採用することを事前に全職員へ伝えた時は不安があがりましたので、初めに社内で説明会を行いました。外国人職員に対して、”分かりやすく””優しく”教えるようにと、まずは日本人職員を教育しました。その後、実際に配属される部署の会議で(日本人職員の間で)どのような不安があるかを聞いて、解決していきました。

利用者のご家族に関しては、利用開始の際に法人で外国人職員が就労していることをお伝えしています。利用者の方に関しては、時代背景などによって差別的な言葉をかけられる場合があることを外国人職員に伝えています。もしもそのようなことを言われたら上司に報告するように、と伝えて対応しています。

 Q:登録支援機関に求めることを教えてください。

上原様:外国人職員への支援を登録支援機関に丸投げということはしていません。外国人職員にとって何か問題があったとき、法人の日本人職員に対しては少し言いにくいことでも、登録支援機関の方には相談できることもあると思いますので、その辺りを聞き出していただくような調整役という立場をお願いしています。法人も、登録支援機関にはいろいろなことを相談させていただいています。

Q:支援を行うにあたってどのようなことを心がけていますか。

斉様:これまでたくさんの外国人の方と関わってきましたが、やはり多くの場面でコミュニケーションが非常に大切だと感じております。日本に来る前から、事前ガイダンスなどでお互いのことを十分に理解しておく必要があると思います。特定技能の方でも、海外から直接来られる場合だと日本語のレベルはまだあまり高くない部分もありますので、来日した後も、受入機関との関係がうまく図れるように間に入ってヒアリングをさせていただいたり、場合によっては通訳の方にも入っていただくことが多いです。

Q:特定技能外国人や受入機関からはどのような相談を受けますか。

斉様:入国したばかりの方だと、主に通信関係です。日本でのインターネットの契約などはどうすればいいか聞かれることが多いです。海外と日本では、通信契約が大きく異なる場合もありますので。
通信関係以外では、母国への送金についても多くの質問をいただきます。

Q:外国人職員の指導方針を教えてください。

上原様:基本的に指導の方針としては、”今やったことは今教える”という形で指導しています。ある程度業務が終わってから、「先ほどのことはね…」と説明しても、外国人職員は何のことを言われているかわからないと思いますので、声かけをしたときや業務を行ったタイミングで、「その業務はこういう形でやりましょうか」「何でこのようなやり方をするか分かりますか?」という質問を交えることで、「業務」としてではなく、「ケア」として覚えるのかなと思います。

Q:法人で実施している入国前の日本語学習について教えてください。

上原様:海外から直接入国される方の日本語学習に関しては、週に1回、介護職で使う言葉や単語などの勉強会をオンラインで行っています。法人の役員が日本語教師もできますので、そちらが対応したりしています。

Q:入国後の勉強はいつ行われていますか。

上原様:基本的には業務時間内で実施しています。授業の頻度は週に1回ですが、毎日宿題がありますので、勉強量はかなり多いかと思います。
また、外国人職員が現状どの程度の日本語の理解力があるのか把握できるため、法人の日本人職員が宿題の添削を行うこともあります。

Q:外国人職員の介護福祉士国家資格取得に対する考えを教えてください。

上原様:外国人職員の方々には、(特定技能1号の期間が満了した)5年後に必ず帰国しなければならなくなるのか、自分の意思で帰国するのか、日本で介護の仕事を続けるのかを選択できる状態になるのは大きく違うということを伝えています。外国人職員が進路を自分で選べるようになるために、法人では介護福祉士国家試験の学習支援も行っています。

Q:介護福祉士国家試験に向けて何か学習計画を立てていますか。

上原様:入職して初年度は、初任者研修を受けてもらいます。その研修の中で、日本語や介護の基本的な部分を勉強してもらいたいと思っています。2年目では、喀痰吸引等研修や実務者研修、介護福祉士に向けての研修を1年ごとに行い、それと並行してN3、N2などの日本語の勉強もしてもらいます。3年目以降は、実務者研修を受講する方がいたり、介護福祉士の過去問を解きながら試験対策の勉強をしてもらいます。本人の習熟度を確認しながら、バランスを調整しています。

Q:初任者研修・実務者研修のフォローは行っていますか。

上原様:初任者研修、実務者研修、喀痰吸引等研修は、全て法人で行うことができます。弊社の職員が講師を務めておりますので、授業の進度や理解度はこまめにチェックしながら、合格できるようなサポートを行っています。

Q:研修によって日常業務にどのような影響がありましたか。

上原様:入国して介護の仕事を始めて、最初のうちはただ言われるように指示を受けて働いていたところが、「自分たちはなぜこれをしなければならないのか」ということが分かってくるので、介護という仕事に対してより深く知ってもらえる、自分の行動に意味を持って動けることに繋がってくるのかなと思います。
また、全ての研修が日本語での講義になりますので、本人たちの日本語の上達スピードはかなり上がると思います。自分がやっている仕事の意味が分かったという方が多いので、受講させてよかったのかなと思っています。

Q:外国人職員と地域の関わりについて教えてください。

上原様:地域の方や、外国人職員たちが住む寮の近くの方には、弊社の日本人職員と一緒に挨拶へ行きました。今度からこの子たちが生活しますので、文化の違いでもし何かありましたら会社へご連絡ください、と地域の方へお伝えしているのと、外国人職員にはしっかりと挨拶をするように、と徹底して指導しています。
地域の方から、「近くの畑で取れたから食べますか?」といって外国人職員へ差し入れをいただいたというような報告が上がってきています。
また、小林市の市報の中にイベント開催の案内が載っているのですが、外国人職員がそれを見て、「やってみたいです」といって参加しています。フラダンス教室や、地域の歴史を知ろうというようなイベントに参加したことはありましたね。

Q:今後、外国人職員は地域でどのような存在になってほしいですか。

上原様:弊社は比較的外国人職員が多い法人ですが、外国人職員が働いているからという理由で施設の利用を敬遠されるのではなくて、ちゃんと地域に溶け込んでもらって、「あの外国人の方がいるからあそこ(ウエハラ)よさそうだね」と言われるような職員に成長してもらいたいです。

Q:介護事業所にはどのような傾向があると感じていますか。

斉様:介護は人と関わる仕事ですので、介護事業所で働かれている方々は人の話を聞くことに慣れていらっしゃる印象です。外国人職員の方にも根気よく伝えたり、聞いてあげる傾向にあるのかなと思います。

Q:これから特定技能外国人を受け入れる法人に対してメッセージをお願いします。

上原様:まず1つ目に、外国人の方々を安い労働力とみなすのであれば、採用はされない方がいいのかなと思います。寮を用意したり、生活・学習面の支援などで様々な出費がありますので、日本人を採用するより高くなることは間違いないと思います。
外国人職員にはひたすら日本語の勉強をしていただいて、就労してから3年後、介護福祉士国家試験が受験できるように、外国人職員の進路の選択肢が増えるようにサポートをしていただければ外国人職員にとってはありがたいのではないかなと思います。

外国人介護職員インタビュー

〈インタビューを受けてくださった方〉

トゥイさん

出身国:ベトナム
技能実習生(水産加工食品製造業)として来日し、技能実習2号を修了。
特定技能1号へ在留資格を変更し、現在の施設で就労開始。(取材をした2023年6月13日時点で入職3年目)
技能実習生の頃に近くの介護施設でボランティアをした経験から、介護職を選んだとのこと。

ソウさん

出身国:中国
技能実習生(農業)として来日し、技能実習3号を修了。
特定技能1号へ在留資格を変更し、現在の施設で就労開始。(取材をした2023年6月13日時点で入職1年目)
中国でも1年半ほど介護職の経験があり、母国にいる両親のお世話のために、日本の介護技術を習得したいとのこと。

 

Q:会社・施設からの嬉しかったサポートはなんですか。

トゥイさん:私にとって一番嬉しかったサポートは、(会社が)日本人の先生を紹介してくれて、毎週日本語の勉強ができていることと、勉強するための教科書や授業のお金を会社が全て払ってくれたことです。
日本語能力試験を受験する日は、会社の人が会場まで送ってくれました。試験が終わったら迎えに来てくれました。

ソウさん:マイナンバーカードの作り方が分からないとき、会社の日本人スタッフが市役所に連れていってくれました。具合の悪いときは、病院にも連れていってくれます。ここの日本人スタッフは心が温かいです。
日本では近くに友達や家族がいないので、初めは不安でした。でも、今はまったくその感じはありません。もう家族のように思っています。皆さんやさしいです。

Q:.後輩の外国人にはどのように仕事を教えますか。

トゥイさん:後輩たちには、日本語を使って教えています。一番大切なことは、利用者さんのお名前です。お名前の漢字や読み方、あとは利用者さんの顔を覚えてほしいです。その次は、薬のことを1人ずつ丁寧に教えてあげています。
他の業務は、実際に仕事をしながら教えます。言葉だけだと伝えきれないことが時々あるので、目の前で一緒に仕事をしながら、業務の様子を見せます。次の日は、後輩にその業務をやってもらって、私は見るだけです。後輩が正しいことをやっていたら黙っていて、違うときは、「やり直しましょう」と声をかけています。

Q:仕事で大変なことや苦手なことはありますか。

ソウさん:今は、日本語があまりできないので、利用者さんと話すときに分からないことがあります。利用者さんが何をやってほしいかわからないとき、私は悔しいです。頑張って日本語が上手になりたいです。

Q:今は、どのように日本語を勉強していますか。

ソウさん:今は、毎週火曜日に先生が日本語を教えてくれます。日本語の本は会社からもらっています。仕事が終わってからは、寮で1日30分~1時間くらい本を読んで自分でも勉強しています。

Q:実務者研修の受講について教えてください。

トゥイさん:実務者研修は、今受講しているところです。今年の12月には試験があります。少し難しいです。介護の専門用語が出てきたり、法律のこと、栄養に関する専門的なこともありますので。

Q:実務者研修の授業の内容が分からないときはどうしていますか?

トゥイさん:実務者研修は、今は5人で一緒に勉強しています。中国人、ミャンマー人、日本人もいます。わからない言葉はたくさんあります。わからないときは、「先生!」と授業中に手を挙げて、質問しています。

Q:地域の方との関係はいかがですか。

トゥイさん:皆さん、優しいです。地域の方からは、野菜、桃、きんかんなどをたくさんもらいましたので、私はお礼をしたくて、「近所の人にお礼をしたいけど、どうしたらいいですか?」と施設の人と相談しました。そして、ベトナムのお菓子をあげました。

Q:休みの日はどのように過ごしていますか。

ソウさん:休みのときは、料理をしたり、勉強をしたり、通りを散歩したり、人と話したり、色々なことをしています。
ときどき、私が作った餃子を日本人スタッフにあげると、「ありがとう、おいしかった」と言ってもらえます。そうすると、私は本当に心が嬉しくなりますので、また時間があるとき作ろうと思っています。

Q:中国でも介護の仕事をしていたとのことですが、日本の介護との違いは何だと思いますか。

ソウさん:中国では、利用者さんのことをスタッフが全部手伝ってあげています。でも、私はできることは自分でやった方がいいと思います。日本では、利用者さんが自分でできることは自分でやります。スタッフが全部手伝ってしまうと、利用者さんは何もできなくなってしまいます。できることは自分で頑張ってやってもらいます。

Q:今後の目標や、将来の夢について教えてください。

トゥイさん:今は日本語が少し足りないと思うので、これから日本語能力試験のN2に合格したいです。実務者研修も頑張ります。毎日宿題がありますので。
長い目標は、介護福祉士国家試験に合格することです。私には子供がいます。介護福祉士国家試験に合格したら、子供を連れてきて、日本で働きながら子供と一緒に住みたいです。会社と寮にはWi-Fiがありますので、毎日少し、ビデオ電話で息子やお母さん、お父さんと話します。「今日は勉強しましたか?」「何を食べましたか?」「日本語でひとつ挨拶してみましょうね」などです。忙しい日は、20分だけでも話すようにしています。子供が私のことを忘れないように。

(記事作成:国際厚生事業団 外国人介護人支援部)

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公益社団法人 国際厚生事業団 外国人介護人材支援部
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