2024年3月29日
株式会社つくばエデュース あいリレー・ケアホームつくば WEBサイト
- 施設種別:小規模多機能型居宅介護
- 所在地: 茨城県つくば市
- 事業所内の外国人職員:計4名(2023年11月時点)
- 特定技能:1名(インドネシア人)
- 技能実習生:2名(インドネシア人)
- 在留資格「介護」:1名(インドネシア人)
株式会社つくばエデュース」は茨城県で小規模多機能型居宅介護事業所、短期入所生活介護事業所、認知症対応型共同生活介護、居宅介護支援事業所を展開している法人です。
2019年に初めて技能実習生3名を受け入れ、現在は特定技能制度でも外国人職員の受入れをしています。また、第35回介護福祉士国家試験では、就労中のインドネシア人2名が合格しました。
この動画では、日本語学習や介護福祉士国家試験に向けた学習指導をどのように行ってきたか、学習計画の立て方や支援体制、外国人職員に対する支援のポイント等を伺いました。
※取材日:2023年11月15日
目次
– Pick Up –
“年間カリキュラムを作成し日本語能力を高めていきます”
“段階的な目標を持たせることで介護福祉士国家試験への道が開けた”
“日本人も苦手な制度の部分は反復練習をすることで知識を深めます”
施設担当者インタビュー
〈インタビューを受けてくださった方〉
- 代表取締役 村上様
- 企画室 室長 飯岡様
- 生活支援・日本語学習担当(関連会社ご所属)藤枝様
Q:介護福祉士国家試験の受験を前提に採用を行っていますか。
村上様(以下、敬称略):受験する・しないについては、基本的には応募する方の希望に応じますが、私どもの場合は、実際に介護福祉士の資格を取得した方が2人おりますので、受験を希望する方が多くなっております。
Q:入国後1年目の日本語の授業について教えてください。
藤枝様(以下、敬称略):入国後1年間でN3を取ることが目標で、月に2回程度(授業を)行い、学習内容としては、(試験対策のため)文法中心に行い、日本語講師から宿題で作文を出します。
Q:入国後2-3年目の日本語の授業はどのような内容ですか。
藤枝:日勤もそうですけど、特に夜勤帯は申し送りが重要になります。例えば熱が出た、この方の体調に変化が見られた、そういうことを申し送りできちんとできるように、訓練もしました。
そのために作文を沢山書かせました。それと、文章で例文を沢山作らせ、あとはみんなの前で発表するという授業を中心にしました。
Q:外国人職員の日本語能力は、どのように上達していきましたか。
藤枝:書く文字の丁寧さ、言い回し方、あとは会話ですね。やはり1年目、2年目、3年目と進むにつれ、すごく日本語が上手になります。
話し言葉は日本人と同じですが、書くときに時々変な言い回しをする時があります。
「ですから」、「だから」という言葉が入る方もいます。
利用者さんとの会話の時は普通です。
話し言葉は普通ですが、「だから」とか「ですから」とか、いらない言葉が結構入るのは確かです。そこは日本語講師が添削をします。
Q:外国人職員にはいつ頃国家試験受験の意思確認をしましたか。
藤枝:2年目の終わりくらいです。
実際入国した時も3年で帰ると考えていた方達でした。
初任者研修を受けた頃から意識し始めました。
介護福祉士の国家資格を取ると、家族も呼べる。
家族といっても配偶者とお子さんです。
あとは日本人と同じような働き方ができる、訪問(介護)もできる(という話をしました。)。
Q:外国人職員の学習のモチベーションを保つためにどのような働きかけをしましたか。
藤枝:迷いがあったり悩みがあったり、(学習内容が)難しいのであれば、(基本に)戻ってみようかとか、そういうアドバイスはしました。
気分転換や話すだけで少し落ち着くという場合もあると思います。
ただ、無理にやりたくないときは、「じゃあ今日はやらなくていいよ」、「今日はやらないで、おいしいもの食べて寝よう」とか、「今日は早く寝たほうがいいよ、休んでまた頑張れるようになったら、頑張ろうよ。今は頑張らなくていいよ」、という話をすると、少し楽になりますよね。
Q:国家試験の受験に向けてどのような学習計画を立てていましたか。
飯岡様(以下、敬称略):入国直後は計画というのはなかったのですが、ある程度日本語で話が出来るようになり、1年ぐらいで初任者研修を取りました。
そこで我々も本人達も、介護福祉士を取れるぞというビジョンが見えてきました。
そこから介護福祉士の受験に必要な実務者研修を介護福祉士受験の半年前ぐらいに受けて、同時に過去問題と模擬試験を使用して、学習講座をスタートしました。
Q:国家試験対策はいつ頃から、どのくらいの頻度で行いましたか。
飯岡:試験対策の講座は、3ヶ月ぐらい前、本当にギリギリのタイミングでスタートしました。
本当であれば半年前ぐらいからスタートしたいところですけれども、結果として良かったのではないかなと思います。
というのも、月に2回集中して注ぎ込むことができ、3ヶ月間でやることができました。
本人たちは結構大変だったと思いますが、詰め込むことができました。
Q:国家試験対策講座の学習時間は1回につきどのくらいですか。
飯岡:介護福祉士の模擬試験を行うのですが、これは実際の介護福祉士の試験時間と同様に捉えております。
介護福祉士の試験時間と同じように模擬試験をやり、それと同じだけの時間で次の講座で解説を行うという形で時間をとります。
模擬的に試験時間をしっかり区切り、介護福祉士(試験)の本番の時間と同じようにやることで緊張感を味わうという意図があります。
これを味わっていただくことで試験当日、少しでも緊張しないようにと意図しています。
Q:国家試験に向けた学習と日常業務を関連付ける工夫をしていましたか。
飯岡:介護福祉士の試験の専門用語ですね。なかなか使う機会がないのですが、1回の模擬試験を受けて学習をすることで、「これがこの動きだ、これがこの制度だ」というのが分かった上で、現場で業務にあたることができるようになる、それを分かった上でもう一度学習することで、「あの時やった、これはこういう名前の制度だ」というのが少しずつ分かるようになってくるようにしております。
Q:学習支援を行う中で、生じた課題を教えて下さい。
飯岡:ずっとパソコンを開きながら、翻訳ソフトを立ち上げながらやっていくのですが、日本語にない、そしてインドネシア語にないものの翻訳がうまくいかない時が非常に難しいですね。そこが一番苦労したところかなと思います。
まず、介護保険制度がインドネシアにはないです。
そこの理解は初任者研修でするのですが、実態として、本人たちが介護保険を受けているわけではない。
保険料を納めているわけでもないです。
40歳以下の方たちですので、実態として制度を理解するのが非常に難しい。
制度に関しては日本人ももともと苦手な部分です。
本当に図を多く使う、表を多く使う、そういったことを基本にするのですが、図や表の言葉の意味がわからないことはよく起きる問題です。
Q:.試験によく出る言葉の対策では、どのような方法をとりましたか。
飯岡:例えばですが、「日常生活自立支援事業」という言葉がありまして、それぞれ普通の言葉です。日常も翻訳できます。
「生活」も、「自立」も、「支援」も、「事業」の翻訳もできますが、これを全部繋げた「日常生活自立支援事業」という言葉になった時に、これは社会福祉協議会が実施する判断力が落ちた方をサポートする制度ですが、そういう制度だよ、というふうに伝えるのが非常に難しい。
ひとつひとつの言葉を解くのではなく、ここまでの単語として単語帳を作りなさい、という指導は私の方でしました。
その単語帳に関して、知らないキーワードはすべて書くようにしました。
母国語で構わないです。 判断力の落ちた人を助ける、お金の管理をする、社会福祉協議会が実施する、だけの一行で構わない、知らない言葉は全部そのように単語で書いていきなさい、と。
これは制度だけではなく、どのような言葉にも使えるものです。
例えば、「必須である」。
これは、日本人はわかるのですが、「必須である」とか「皆無である」というのは、外国人職員が聞いたことがない言葉です。
現場で僕ら皆無ですと使わないですから、そこに関して「皆無」という言葉は、無いとイコールだからね、全て単語に自分で落とし込みなさい、という試験用の言葉対策講座ですね、そこはしっかりと教えました。
Q:日本語の学習と介護の専門知識の学習、この2つを関連付ける学習は必要と考えますか。
飯岡:普段使う言葉と同じ意味の言葉です。
介護福祉士の国家試験に出てくる日本語は、絶対に知っている言葉を難しく言い換えているだけです。そこを結びつけるために普段使っている言葉だけを知っていれば良いと考えており、試験対策になった時に「必須だ」「皆無だ」「ありえない」などの言葉を全て「ない」や「ある」に翻訳できるように単語帳を作り、本人の頭の中で変換ができれば、問題ないと思います。
Q:今後の課題を教えてください。
飯岡:技能実習制度は今度大きく変わるところで、今まで来ていた技能実習生と、特定技能外国人とのレベルの差が今後大きく開いていくのではないかと思っており、どういった人材が来るのかを見極めることが大きな課題だと思っています。
外国人も、日本の事業所を選ぶ時代に来ています。
そうなると、例えば、「東京や大阪などの大都市圏に近いところがいい」、「給料が高いところがいい」というのは、外国の方が思って当然のことですので、その中で選ばれる事業所になるためにどうすればいいか、どう選ばれる事業所になっていくかが1つ大きな課題になると思います。
Q:外国人職員の受入れを検討されている法人に向けて、メッセージをお願いします。
村上:実際に受入れる現場の皆さんや経営する方や管理する方にとっては、初めての受入れは、「本当に大丈夫なのか」、「日本語できるのか」と、心配になる部分がすごく沢山あると思いますが、実際受入れてみればなんとかなる部分が多分あるということ、特定技能も技能実習も、きちんとサポートがあるところとうまく連携し、基本的には日本に来たい、熱い思いをもった、とても良い若い人材の皆さんが沢山来日しているので、ぜひそういった外国人の方の日本の福祉の仕事、介護の仕事をしたい熱意に応えられるように、我々経営としてやることが必要だと思います。
ぜひそういった思いでやっていくと、きちんとやれていくのではないかなと思います。
外国人介護職員インタビュー
〈インタビューを受けてくださった方〉
プトリさん
2019年8月に技能実習生として来日
日本語能力:N1取得
2023年1月の介護福祉士国家試験合格。
介護の技能実習生として来日し、技能実習2号を修了した後、特定技能へ移行
Q:どうして日本で介護をしようと思いましたか。
日本語を上達させたくて、介護の仕事をすれば、利用者さんや日本人職員とお話をする機会が多いので介護を選びました。
Q:日本語を使う練習はどのようにしましたか。
例えば友達と日本語で話す前や、仕事に行く前に、利用者さんと何を話すか、日本人職員に何を聞くかを先に考えてノートに書き出していました。
生活のことも、日本人職員によく聞いていました。それも(質問も)日本語を使うので、先に文章を書いて用意してから質問をしました。
Q:1年目の学習方法を教えてください。
日本に来る前にN3に合格したので、1年目は仕事に慣れるために介護の勉強をしました。
あとは、会社からをもらった介護のテキストを勉強し、1ヶ月に1~2回ほど介護と日本語の勉強会がありましたので、わからない言葉を先生に聞いていました。
Q:具体的にどのような内容を勉強しましたか。
1年目の学習は、N4の復習やN3の試験準備、例えばN3の文法や言葉、あとは作文も書きました。
また、介護の専門用語も少し勉強しました。
Q:1年目の学習で、特に役に立った学習と大変だった学習は何ですか。
先生がいろんな方法で教えてくれたので、本当にわかりやすかったです。
例えば、文法の勉強ですが、一人が二つずつN3の文法を選んで、自分でその文法に関してインターネット等で調べ、翌月に皆さんの前で発表します。
それをやると、文法の勉強にも慣れ、会話の練習や、聴解の練習にも慣れたので本当に良かったです。
理解しにくいのは、難しい漢字が結構あって、間違って書いてしまうこと、あとは作文を書くことです。
例えば、違う文法を使ってしまうことや、(丁寧語と)尊敬語を使い分けるのが難しかったです。
Q:日本語の上達のために、どのように勉強したらいいと思いますか。
本だけではなく、毎日の生活の中で日本語を話す習慣が必要だと思います。
日本に来る前はインドネシアで文法や読解を勉強しましたが、日本語を話す機会が少なくて、上達させるのが少し難しかったです。
日本に来てからは、毎日日本語を使って、日本語で話す機会が多くなったので、上達させることができました。
Q:働き始めて、2年目はどのような勉強をしていましたか。
2年目はN2を勉強しました。
コロナでなかなか出来なかったけど、2021年7月に受験し、N2に合格しました。
その後、(2021年)12月にはN1に挑戦して、合格できました。
あと、初任者研修を受けたのも2年目ぐらいです。
その年は介護の勉強、介護の知識についても少し勉強しました。
N1に合格した時に、介護福祉士はどういう問題か、どういう試験なのか知りたくて、市販のテキストを自分で買いました。
その本では、試験の項目とか言葉・漢字とか、専門用語について勉強しました。
過去問も少し入っていたので、勉強しました。
Q:介護福祉士国家試験の勉強で何が大変でしたか。
漢字と専門用語です。
専門用語は漢字で書いてあるので、本当に難しかったです。
初任者研修や実務者研修の時にもらった教科書にはフリガナが書いてあるので、漢字の問題は解決できましたが、内容(試験問題)では、やはり法律や保険制度、社会の理解が一番難しかったです。
Q:一番ありがたかった施設からのサポートを教えてください。
飯岡さん(法人担当者)は、普段から実務者研修を教えている方なので、インドネシア語に通訳(翻訳)しながら教えてくれました。
わからないことをいつでも聞ける環境で本当にありがたかったですね。
Q:介護福祉士国家資格を目指している外国人の方にアドバイスをお願いします。
介護福祉士を目指している外国人は、本当に介護福祉士に合格したければしっかり目標を持ち、諦めないことが一番大切です。
難しくても、少しずつ勉強するのが大切です。
また、勉強したことは仕事の中で使うことができます。
実務者研修、初任者研修を受けて私は介護の知識が増えたので、間違ったやり方を改善することができました。
(記事作成:国際厚生事業団 外国人介護人支援部)
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公益社団法人 国際厚生事業団 外国人介護人材支援部
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