【色々なことを吸収してほしい】長期的に就労できるようなサポートを実施・検討 福岡県の障害者施設のケース

2024年12月24日

施設DATA

社会福祉法人伍福会 ふるさと WEBサイト

  • 施設種別:生活介護
  • 所在地: 福岡県八女市
  • 事業所内の外国人職員:計1名(ベトナム人)(2024年7月時点)

「社会福祉法人伍福会」は障がい者/障がい児を対象とした様々な福祉サービスを提供している法人です。
現時点で人手不足ではないものの将来を見越して、2022年4月にベトナム人の方1名を採用されており、外国人の方が就労開始当初に日本で長く働きたいと話をされたことをきっかけに、本人が長期的に就労できるようなサポートを実施・検討されています。この動画では、外国人職員が長く日本で働きやすくなるための工夫や、法人による支援内容についてお話を伺いました。

※取材日:2024年7月18日

目次

  1. Pick up
  2. 担当者インタビュー ~法人の担当者~
  3. 特定技能外国人職員インタビュー ~ズイさん(ベトナム出身)~

 

– Pick Up –

“段階的な目標の立て方について”

“教育に力を入れる理由”

“外国人支援について”

施設担当者インタビュー

〈インタビューを受けてくださった方〉

  • 常務理事 施設長 中島 善成 様

 

Q1. 外国人介護人材を受け入れた理由を教えてください。

将来を見越したときに外国人の方の手を借りる必要がでてくるため、まずは経験がしたいと思い、差し迫った状況になる前に制度的な問題や文化的な軋轢あつれきを経験しておきたいということで取り組みました。

 

Q2. 外国人を雇用する際の採用基準や留意点を教えてください。

明確な基準はありません。外国人の方に限らず日本人も同様ですが、一緒の職場で働くことにより、どのような化学反応が起こるのか、楽しく仕事ができるのかを想像しながら採用しており、厳密な基準を設けていません。
できれば、(外国人に関しては)日本語が上手に話せればありがたいですが、N3レベルの方であれば大丈夫かと思います。仕事を通して日本語を学んでいただければ良いと思いますので最初から日本語が上手でなければならないということではありません。

 

Q3. 外国人に対して障害者施設での業務内容をどのように説明しましたか。

(ズイさんは)面接時、日本語が十分できなくて言葉での説明が難しかったので、(直接事業所に)足を運んでもらい、実際の現場をしっかり見ていただくことを優先的に行いました。

 

Q4.介護福祉士国家試験に向けた目標設定はどのようにしていますか。

入職当初は日本語が十分ではなかったので、ステップをいくつかに刻み、まずはN2に合格し、それから初任者研修を受けようという話をしました。
入職当初の段階で(特定技能として)何年在留できるのかという話をし、逆算すると、そこまでに介護福祉士に合格しなければならないから、2回目の受験で合格する必要があるという話をしました。その前に実務者研修、初任者研修、さらにその前に日本語が分からないと理解できないという段階を説明して、努力をしてもらった経緯があります。

 

Q5.研修費用を法人負担としている理由は何ですか。

(研修費用の負担は)外国人の方に限りません。日本人の方でも未経験の方には仕事をしながら資格を取ってもらうので、資格を取得するための費用は会社で負担します。
理由は、日本人の中途採用の方でも他業界から入社してほしいと考えており、介護業界のルールだけではなく、世間の常識(ルール)を取り入れたいからです。
そういう方(未経験の方)には学びの場を提供したいと思うので、(会社で)制度を作っています。

 

Q6.受入れ後、外国人にどのような成長や変化が見られましたか。

一番の変化は、日本語がスムーズになったことでやり取りがとても柔軟になりました。プライベートも含め関係性がより良くなり、そこが一番の変化です。仕事に関してもより積極的になり、安心からか表情も穏やかになったことも当初からの違い、成長(した部分)と思っています。

 

Q7.外国人の業務指導方法で、心がけたことを教えてください。

最初は日本語の理解が難しかったと思いますので、見て覚える形で日本人職員と一緒に現場に入り、言葉で教えたというよりは、お手本を見せて身に付けてもらいました。
職場で日本語の授業はしていませんが、他の職員が公民館での(日本語の)授業を紹介したことがありました。ただ、コロナの影響でなかなか行くことが出来ず、どちらかというと日本語を含めての現場でのOJTですね(学習に繋がったと思います。)
例えば利用者さんのご家庭への連絡や職員とのやり取りをメール等で行いますが、ズイさんも日本語で書いており、確認や質問をしながら、現場の職員も「あそこは良かった」「こう書いた方が良い」と伝えてくれていましたので、このやり取りが日本語レベルの向上に繋がっていたら嬉しいと思います。

 

Q8. 外国人への配慮するうえで大切にしていることは何ですか。

入職当初の配慮は生活面からサポートしていかないといけないと思います。
右も左もわからない中、一人で日本に来ているので常に気遣いをすることが大事だと思いますコロナ禍の大変な時期に入職し、ズイさんがコロナに感染したときは職員総出で飲み物や食べ物を玄関に置くなど、色々なものを調達しました。そういう気遣いで関係性が築けたと思います。2、3年経つと、生活面は落ち着きますが、「最近大丈夫?」というような声かけを日本人職員がこまめに言っており、ちょっとした気遣いが必要になってくると思います。
仕事においては、(現在は)後に入ってきた未経験の方に教える側に立っています。本人が助ける側、サポートする側になっているので、(法人として)そこに対する感謝を示していくことも大事なことだと思います。

 

Q9. 新たな支援として、どのようなことを検討していますか。

一定期間以上勤務をした外国人には、数日間の特別休暇と有給を合わせて数週間母国に帰ることが出来る仕組みを作りたいと思っており、その際に航空チケット代も条件つきで支援することなどを検討しています。
住宅手当も外国人の方には若干配慮を検討しています。日本人の場合、3年間で少しずつ(手当額は)下がるものの、一定の基準を超える遠方からの転職者や新卒者には家賃補助があります。そこを外国人の方には、(3年に加えて)あと2年位延長し家賃補助を支給することを検討しています。

 

Q10. 人間関係の良い職場づくりのために大切にしていることは何ですか。

外国人か日本人かはあまり関係ないことと思いますが、日常的に仕事の中でコミュニケーションをしっかり図ることが一番大事なことだと思います。細かいことになりますが、感謝をきちんと伝えていく、「ありがとう、あなたがいてくれて助かった」とお互いに交換し合う職場にしていくことも大切だと思っています。また企業の理念を共有することも大事だと思っており、何のために見ず知らずの人間が集まって一つのことをしようとしているのか、理念(多様な人の笑顔のために、共に考え、共に生きる。)の実現のためということを共有していくことが大事だと思っています。

 

Q11.特定技能外国人に今後期待することを教えてください。

長く働ける方は一緒に働いてもらいたいと思いますが、せっかく日本に来て仕事をしているので、日本語だけではなく色々なことを学んでいただき、もし母国へ帰国することがあれば日本で経験したことを次のステージに活かしてもらい伍福会で働いて良かったと思ってもらえればありがたいと思います。

 

 

外国人介護職員インタビュー

〈インタビューを受けてくださった方〉

ズイさん

2022年4月より就労開始
日本語能力:N2取得
農業の技能実習2号を修了した後、特定技能(介護分野)へ移行

Q1.なぜ介護の仕事をしようと思いましたか。

自分は元々、人のお世話をすることに興味があって、日本で外国人を受け入れる施設が増えてきて、農業の技能実習生を3年で修了したときに仕事を変えたいと思い介護の仕事にしました。

 

Q2. 今の仕事で好きなところややりがいを感じることはなんですか。

ご家族や利用者さんの感謝の気持ちを伝えてもらうことが多く、それが仕事のやりがいとして大きなモチベーションになります。

 

Q3.なぜ障害者施設で働こうと思いましたか。

最初は障害者の方への(仕事)のイメージは全くなかったです。見学に行ったときに楽しそうだと思い、また施設からも色んな説明をしてもらい、障害者の方への(仕事の)イメージができました。勤務時間やメンバーさん(利用者さん)と一緒に何をするのか、職員さんと一緒にどんな仕事をするのかを説明してもらいました。

 

Q4.どのように仕事を覚えていきましたか。

先輩から教えてもらいながら少しずつ覚えていきます。わからないことはメモを取って(先輩にその言葉の説明をしてもらい)覚えていきました。(仕事をする前に)いつもと違う言葉を考えて利用者さんと話をしたり、新しい話題で話を広げ、良い雰囲気を作るようにしています。

 

Q5. 独学でN2を取得したとのことですが、どのようにしてモチベーションを保ちましたか。

仕事が上手くなりたかったです。日本語が上手になるとメンバーさん(利用者さん)の気持ちもわかり、少しずつメンバーさん(利用者さん)のお話を理解できるようになり、他の職員さんと相談できてメンバーさん(利用者さん)の様子を詳しく伝えることができます。(仕事で)分からないときはメモを取ったり職員さんに聞いたり、家に帰ってからも少しずつ勉強しました。(仕事が終わって)元気な時は、毎日1~2時間勉強します。疲れていても30分位勉強します。新しいことを勉強することは大事ですが、復習することが一番大事だと思います。

 

Q6. 介護福祉士国家試験は、いつから、どうして目指しましたか。

(就労開始して)1年目から目標にしました。日本で働きたいし、自分の知識を向上させるために介護福祉士国家試験に挑戦しています。介護福祉士国家試験に合格しないと日本で長く働けません。

 

Q7. 介護の勉強をしていて、わからないときはどうしますか。

わからない時は会社に(メモを)持っていき、会社の人に説明してもらいます。職員さんは、「分からない時はぜひ聞いてください」、「一人じゃないで、みんながおるから」、「いつも応援しています」と言ってくれます。

 

Q8. 日本の生活で気に入っていることはなんですか。

毎月1回、会社の人と一緒に回転寿司に行ったり、ボウリングに行ったり、海に行ったりすることです。

 

Q9.これからの目標や将来の夢を教えてください。

来年は介護福祉士国家試験に合格して、再来年は車の運転免許を取りたいです。どんな目標でも日本語が関係しますので、毎日頑張って日本語を勉強し、大きい目標があったら小さい目標に分けて段階的に進めて、大きい目標に向かっていきます。

 

Q10. これから日本で介護の仕事をしたい人たちに向けて、アドバイスやメッセージをお願いします。

日本語の習得が一番大事だと思います。介護福祉士国家試験(の問題)は日本語です。
基本的な会話を身に付けると日常業務がスムーズになります。介護の専門用語を学んでおくと良いと思います。

 

(記事作成:国際厚生事業団 外国人介護人支援部)

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